もし10年前にコロナ禍が起きていたら--「Zoomになれなかった」スカイプ
2010年にも「スカイプ飲み会」
――コロナ禍でリモートワークやオンライン飲み会がトレンドになりましたが、スカイプでも同様の盛り上がりがあったとか。 まず自分たちがスカイプを使いこなさなくてはとの思いから、スカイプジャパンでは週2日をフルリモートにしていました。勤務時間中はずっと音声をつなぎっぱなしにして、オフィスと同じような環境を作っていました。「この件はどうなってましたっけ?」と気軽に声をかけるなど、ちょっとした会話が大事ですから。 2005年のスカイプでも社内の仕事で困ったことはないです。結局のところ、問題は社外の人との会議や商談ですよね。技術の問題というより、コロナでみんなが一斉にリモートワークをはじめるような状況がなければ、この問題は解決しない。スカイプを一部の企業や官公庁がリモートワーク用に導入する動きもありましたが、組織の外とのコミュニケーションという壁を壊すには到りませんでした。 スカイプでも、遠隔の語学教室などがありましたね。飲み会需要もあったようです。2010年頃、ある雑誌社から「スカイプ飲み会について取材させてほしい」という連絡がありました。私はまったく知らなかったので、逆に「スカイプ飲み会ってなんですか?」と聞き返したら、「なんで知らないんですか? 本当にスカイプの人ですか?」と怒られたり(笑)。 ――当時、同様の機能を持ったサービスがほかにもあるなかで、なぜスカイプはあれほど普及したのでしょうか。 第一に音質が圧倒的によかった。アナログの音声データをデジタルデータに変換するコーデックと呼ばれるソフトウェアが非常によくできていた。それに音声帯域が電話よりも広いのです。無料のサービスなのに、有料の電話よりも音質がいいなんて、当時は想像できなかったのではないでしょうか。 第二に導入が簡単だったこと。今ではパソコンにソフトウェアをインストールしたらすぐに音声通話できて当たり前ですが、当時はルーターの設定を変える必要がありました。エンジニアならばともかく、一般のユーザーにはハードルが高いですよね。スカイプはルーターの設定を変えなくてもつながります。今までは面倒な設定が必要だったのが、テクノロジーで自動的に解決してくれるという点が長所でした。