「がん」診断で突きつけられる現実… 「きれいな部分だけでなく裏の面を見ざるを得ないことも」 患者の人生をつなぐ「がん専門相談員」
「坂本さんだったからなのかなって。スマートで、主人とも密に連絡とって、書類とかいろいろ面倒くさいことをすごく早くやっていただいた。こんな病院あるんだなって。気を使わせず、優しく楽しく話して、いろんな人を紹介してくれて。家に帰って私がどうしたいかをすごくみんなが聞いてくれました」(藤原さん) 自宅を訪問する医師や看護師などのサポートを受けながら、大切な家族と自宅で過ごしたい。藤原さんの願いを支えたのが、坂本さんがつないでつくられたチームだった。
■がん相談支援センターの重要性は増す一方…低い利用率
東病院がある柏市内で、定期的に開かれている会議がある。在宅医療に関わる医療や介護、行政、民生委員など、様々な職種が集まり、ワークショップなどを通じて“顔の見える”関係を作り、連携を深めている。 こうした日頃からの連携が、ある患者の在宅サポートに役立ったケースがある。宮田勝広さん(58)。宮田さんは血液がんの1つ「多発性骨髄腫」の治療を続けているが、がんの影響で背骨の一部を骨折し、神経が圧迫されて両足がまひ、車椅子での生活を余儀なくされている。
独り暮らしの宮田さんのもとには週2回、訪問看護師が入りサポートしている。初めは他人が自宅に入ることに抵抗があったというが、坂本さんたちのチームが何度も交渉を重ねたという。 「宮田さんらしく生きてもらうためにも、『これ以上足の調子を悪くしてしまうわけにはいかない』と担当の先生が。目標はそこ。(訪問看護師のワーファさんが)おうちに伺う時に『どこまでの範囲だったら入って大丈夫か?』ということも、ちゃんと宮田さん自身に直接聞いて下さった」(坂本さん) 「最初断ったんだよね。訪問看護はいいですわと。だけど、治療しないと治らないから、足をこのまま放っておいたら……そこまでひどいのかと思って。俺もシャッター閉めてたけど、とにかくこの病気のことを自分自身も知らないし。じゃあ知っている人の言うこと聞いてみるかって」(宮田さん) 坂本さんが働くがん相談支援センターの重要性は年々増している。ただ、その存在は知っていても、実際に「利用したことがある人」は2割未満。理解を深めてもらうため、坂本さんも病院の外でセンターの役割や取り組みを伝え続けている。 坂本さんが取り組んでいる課題の1つが、15歳から30代までのいわゆる「AYA世代」のがん患者のサポートだ。就学や就労、結婚・出産・育児など、人生の大きな転換期があるAYA世代。その時期にがんになり治療を受けることで、心身にさまざまな影響が出ることがあり、支援が求められている。