「がん」診断で突きつけられる現実… 「きれいな部分だけでなく裏の面を見ざるを得ないことも」 患者の人生をつなぐ「がん専門相談員」
オンラインで参加していた、これから藤原さんの訪問診療を担当するクリニックの看護師からは、「ご自宅に帰られて、いざという時の急変時の対応は、(東)病院の方で受け入れはどうなっていますか?」との質問が。これに坂本さんは、“自分の口から希望を伝えてほしい”と、藤原さんに発言を促す。 「これが天命だと思っているので。そうなった時には慌てず、救急車を呼んだり、延命処置もなしで終わりたいと、家族にも伝えてあります。そこまでの幸せな人生で閉じる、という感じです」(藤原さん) 無理な延命処置はせず、見送ってほしい。藤原さんの意向を医療スタッフみんなで共有する。 「家族以外の誰かがみてくれる、何かあった時の連絡先がきっちりとできるのは、家族にとってもありがたいことだなと思います」(夫の昴さん、仮名) 藤原さんは会社の同僚だった昴さんと出会い、結婚。娘の和泉さん(仮名)と3人、幸せな毎日を送ってきた。 自宅へ帰る日、医療・介護スタッフなどが訪問するスケジュールを坂本さんが確認する。 「ご家族の事をすごく大事に思っておられるので。少し体のつらさが和らぐと家族とのコミュニケーションもスムーズになるじゃないですか。そういう状況で帰っていただけそうだなということで、素直にうれしいですし、少しでも穏やかに過ごせる日々が長く続くといいなと」(坂本さん)
■坂本さんと長年活動するがんサバイバー「患者の力を信じて待ってくれる」
7月、神戸での緩和医療に関する学会参加中、坂本さんはふと思い出した。 「患者さんの雰囲気や季節などを思い浮かべながら、レモンのように爽やかな生き方の方だなと思ったので。改めて退院して一息ついたところで、感謝の気持ちを伝えたいなと」(坂本さん)
手紙の宛先は、延命処置を望まず自宅で緩和ケアを受ける藤原さんだ。 「出会って病院から送り出すまでわずか1週間足らずだった。これまでどう生きてきたかを率直に教えて下さり、病院を出る時に『こんなに準備してくれてありがとう』ってすごい笑顔を見せて下さって。それが私たちの日々のやりがいになる。お手紙でいつでも見返せるような形でメッセージを伝えることで、『もう相談してはいけないかな』という気持ちのハードルが下がればいいなと」(坂本さん) 自身の闘病体験をもとに、小児がんを含むがん患者やその家族の支援を続ける、一般社団法人CSRプロジェクト代表理事の桜井なおみさん。長年にわたって坂本さんと活動を共にしてきた。