「がん」診断で突きつけられる現実… 「きれいな部分だけでなく裏の面を見ざるを得ないことも」 患者の人生をつなぐ「がん専門相談員」
「待つんだよね。待てるの。患者さんを信じているから、患者さん自身が解決する時間を待ってくれる。少し待ちながら、少しずつ羅針盤を光で照らしていく。歩くのは患者だから。その力を信じてくれているのがわかるので、すごくうれしい。だから、私たちも信頼して『坂本さん、坂本さん』と言える」(桜井さん) この仕事に就いて20年以上、患者の人生を見つめる日々。 「相談されている内容そのものにすごく考えさせられたりする。そのことですごくつらかったり、悔しいと思うことはありますが、この仕事をもうしんどいと思うことはあまりないんです」(坂本さん)
■「病気は人を孤独にする」 病気を患った恩師などの言葉が転機に
自然豊かな高知で生まれ育った坂本さん。音楽に興味を持ち、声楽の道に進もうとしていた。しかし、18歳の頃、転機が訪れる。病気を患った高校の恩師や交通事故に遭った家族のある言葉に考えさせられたという。「病気は人を孤独にする」「自分の本質は何も変わっていないのに」。これ以降、坂本さんは人と向き合う仕事を意識するようになった。 大学4年生の時、研修先の病院の関係者や患者との出会いがきっかけで、医療ソーシャルワーカーに。2004年から東病院のがん専門相談員として働き始める。
その仕事ぶりを見守ってきた大津敦病院長(取材当時)は、「いろんな人の相談を受けて、必ずしも感謝されるわけではないし、嫌なことも山ほど経験しているはず。『何で俺ががんになったんだ』って怒りをぶつけてこられる方もたくさんいるし、表面のきれいな話でなく、誰もが見たくないような裏の場面を見ざるを得ないことも時々ある。やはり精神的にタフじゃないと務まらないし、そういうところが強いのでは。人が好きなんじゃないですかね。その人にとって少しでもハッピーであればと」と話す。 坂本さんからの手紙を大切にしているという藤原さん。 「わざわざ直筆で書いてくれたんだと、うれしいなって思いました。個人から来た感じで。でも返事を出せていなくて。(病状の)浮き沈みが激しいから、具合悪いって言うと心配しちゃうかなって。会いたいですね」(藤原さん) 坂本さんたちの勧めで導入した介護用リクライニングベッドを使っている。費用の高さを心配していたが、ひと月2000円で借りることができた。40歳以上の人ががんで根治が難しいと判断され、要介護や要支援の認定を受けた場合、介護保険サービスを利用することができる。