“見ず知らずの人を尾行する”奇想天外な人間ウォッチングをアートに仕立てる奇才ソフィ・カル氏に迫る【世界文化賞】
アイデアは奇跡のようにおりてくる
Q 今後、どんな作品を作っていきたいですか? カルさん: 一番最近にやったパリのピカソ美術館での展覧会では、人生で失敗したことをテーマにしたものが多かったです。人生の総括の一種でしょうか。 アイデアというのは、年に一つ思い浮かべば上出来で、道を歩いているとき、人と会話しているとき、ふと思いつくものです。 トルコで海から15キロのところに住んでいるのに、貧しすぎて行く気さえわかないので海を見たことのない人たちがいる、という新聞記事から、《海を見る》という作品は生まれました。アイデアというのは、奇跡みたいにおりてくるものなのです。 奇跡と言えば、まったくの偶然で、11月19日の世界文化賞授賞式直後の11月23日から東京・大手町の三菱1号館美術館でカルさんの作品を見られる展覧会が始まります。設備のメンテナンスのためしばらく休館していた三菱1号館美術館での「再開館記念「不在」 ―トゥールーズ=ロートレックとソフィ・カル」がそれで、代表的なシリーズ作品だけでなく、初公開の作品もあるそうなので、読者のみなさんにも朗報です。 Q 最後に世界文化賞の受け止めをお聞かせください。 カルさん: 知名度を重視する賞もある中で、世界文化賞は私の知名度ではなく、私の仕事を評価してくださった賞だと思うので、大変うれしく思っています。かつて日本旅で負った失恋の痛手もすっかり癒えて、今や日本は大好きなので、その日本でいただく賞であることも、うれしいです。 自らの体験を作品とするカルさん、世界文化賞で体験したことももしかすると作品になるかもしれない。
勝川英子