「男のほうが頭がいい」「天才は男性に多い」という考えが端的に「間違っている理由」
天才は男性が多い?
ここで皆さんに質問です。「天才」という言葉を聞いて、思い浮かぶのは誰でしょう?ここまでの話を踏まえて、「頭の良さ」という意味での天才の名前を、30秒間で挙げてみてください。 さて、誰の名前が思い浮かびましたか?天才といっても、色々な分野の色々な天才がいます。画家であればフィンセント・ファン・ゴッホが思い浮かぶかもしれませんし、作家でいえばヴァージニア・ウルフ、音楽でいえばヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト、スポーツでいえば大谷翔平、芸術家として草間彌生を思い浮かべたかもしれません。 このように、女性の天才も多数いるわけですが、頭の良さに関していえば、ルネ・デカルトやアルベルト・アインシュタインなどの男性を思い浮かべることが多いのではないでしょうか。もちろん、男性のほうが天才が多いと言いたいわけでありません。哲学や数学、物理学などの「頭の良さ」が必要そうな分野には歴史的に男性が多く、男性が主要な役割を担ってきたため、男性のほうが思い浮かびやすいというだけのことです。 こういった歴史上の天才は別としても、頭の良さに性差がないという先の結論を聞いて違和感を覚えた人もいるかもしれません。身近な頭の良い人として、家族や知り合いの男性が思い浮かんだという人もいるでしょう。 個々人のレベルでは、頭のいい男性もいれば、頭のいい女性もいます。ですが、そのような個々人を基に、「男性は頭がいい」という主張はできません。というのも、これでは身近に頭のいい人がいるかどうかに左右されてしまうからです。残念ながら、多くの人はこういう思考をしてしまっています。せいぜい数名の例に基づき、男性は頭がいいと考えてしまうのです。 ですが、女性と男性という、それぞれ地球上に存在する数十億人を、数名の事例に基づいて決めつけていいはずがありません。実際に地球上の全員を調べるわけにはいきませんが、ある程度の人数を調べて、その平均値などを、統計学を駆使して分析することで妥当な結論を下すことはできます。 このような方法で調べた結果として、現在では、頭の良さ、特に一般知能については性差がほとんどないと考えてよさそうです。(※1) 性差に限らない話ですが、世の中にあふれる疑似科学は、事例に基づいていることが少なくありません。少数の事例を基に、全体がそうであるかを語るという手法です。がんの治療法とか、子育て法とか、自身の体験などに基づいてあたかも全体に当てはまるように語ります。ですが、これは科学的には誤りであり、誇大広告と言えます。 個々の事例の話と平均的な傾向が異なるという点は、女児や男児の話をするうえでも極めて重要です。本書は、平均的な傾向に基づいて進めていくという点にご留意ください。