桂よね吉と茂山千五郎の「笑えない会」…京都で12月28日、「じっくり聴く長講の沼にどんどん誘い込みたい」
桂米朝一門の落語家、桂よね吉が、同世代の狂言師、茂山千五郎との二人会「笑えない会」を12月28日、京都市中京区のヒューリックホール京都で開く。2012年から、上演する機会が少ない長講に挑む場として続けてきた企画で、よね吉は今回、浄瑠璃の一コマを巡る勘違いが引き起こす騒動を描いた古典落語「胴乱の幸助」を披露。「長いネタならではの魅力にはまってもらいたい」と話す。(吉田清均)
「笑えないかもしれない演目を選ぶようになった」
よね吉は1995年、米朝の弟子、桂吉朝に入門。歌舞伎などを題材にした芝居 噺(ばなし)を得意とし、2007年にNHK新人演芸大賞、20年に繁昌亭大賞を受賞した。
米朝一門が茂山家と親交があった縁で千五郎と知り合い、「笑えない会」を始めた。当初は、若手だった2人が、年長者から「芸の浅いお前らがやるなんて、笑えないな」と言われそうな大ネタに手を出す試みだった。10年以上続けてきて、今では、観客が時代背景を知らないと話の筋が伝わりにくく、「笑えない」かもしれない演目を選ぶようになったという。
「爆笑王のイメージが強すぎる演目」に挑戦
「胴乱の幸助」も、そんなネタのひとつだ。
舞台は明治初期の大阪。他人のケンカを仲裁することが道楽だという変わり者の男が、町で浄瑠璃の稽古を耳にする。演目「 桂川連理柵(かつらがわれんりのしがらみ)」で、帯屋の 姑(しゅうとめ)が嫁をいじめる場面を練習する声を聞き、実際にもめ事が起きていると思い込んで仲立ちしようとすると、京都で起きた話だと言われたため、淀川を船で遡り、 噂(うわさ)の家を探し歩く。
このネタは、米朝も吉朝も手がけたが、中でも米朝の弟子で「爆笑王」と呼ばれた桂枝雀が軽妙に演じ、聴き手を大笑いさせていた印象が残っていた。「枝雀師匠のイメージが強すぎて、自分がどうやって演じたらいいか分からず、遠慮があった」と明かす。
今回、挑戦しようと決めてからは、浄瑠璃や義太夫節の歴史を調べ、自身も義太夫節を教わった経験も生かして演目への理解を深めた。男の勘違いが生むおかしみを、よりリアルに表現できるようになったと感じている。「思い込みや勘違いによるすれ違いから生じる笑いは、現代のコントでも使われている。面白いと思ってもらえるはず」と自信をのぞかせる。