第90回以来6度目の選手権制覇に向けて “凄み”を増すばかりの 市立船橋のエース・郡司
11月11日、第102回全国高校サッカー選手権千葉予選の決勝がフクダ電子アリーナで行われ、昨年度と同様に市立船橋と日体大柏が激突。 【フォトギャラリー】市立船橋vs日体大柏 3年ぶり24回目の選手権出場を決めた市立船橋のエース、FW10郡司璃来(3年)が“凄み”を増している。 【フォトギャラリー】市立船橋vs日体大柏 2年連続同カードとなった日体大柏との千葉県決勝で、ハットトリックを達成。5-1の快勝に貢献し、昨年のリベンジを果たすとともに、会場のフクダ電子アリーナに詰めかけた市船応援団の喝さいを浴びた。 「自分の役割は、決めるべきところで、しっかり決めて、チームを勝たせること」(郡司) 単に得点するだけではない。自身の得点で、チームを勝利に導いてこそ、エースたる証。その気概と覚悟、責任感が言葉の端々ににじみ出る。 ゴールハンターのごとく、常に得点をねらい続ける郡司は、刹那に生まれるチャンスを逃さない。いや、むしろ何でもないはずの状況を一気にチャンスに変えてしまう老獪さに長けている。そういったほうが正しいだろう。 決勝でのハットトリックがそれを裏付ける。 1点目は“ややアバウトにけられた前方への浮き球パス”に対し、相手DFと競り合いながら、ボールの弾み方を見極めつつ、相手DFの前に体を入れ、ゴールに向ってシュート体勢を整えた。そして、ほかのDFがカバーにくる前に右足を振り抜き、ペナルティエリアのライン上からゴール左隅に突き刺してみせた。 「自分の得意な位置だったので、迷わずに打ちました。イメージどおりでした」(郡司) 2点目は“相手のバックパス”をかっさらい、そのままゴール前まで落ち込み、相手GKとの1対1を足裏ドリブルで抜き去り、難なくゲット。3点目は自陣から“大きくけられたスペースへのボール”にいち早く反応し、飛び出してくる相手GKの鼻先をかすめるように流し込んだ。 自分たちが保持していたはずのボールが、もしくは相手の意図していないボールが、いつの間にか、失点に変わっている。ピッチ上で、違いを生み出す郡司の才覚。対峙した相手守備陣にしてみれば、文字どおり一瞬たりとも気が抜けず、これほど厄介な存在はいないだろう。 今年の県予選で、市船は準々決勝から登場したが、郡司は3試合連続ゴールを決め、通算5得点を記録。余談になるが、今予選の初戦にあたる10月28日、白井戦の3日前に行われたU-18プレミアリーグEASTの川崎F戦で、後半から出場した郡司はハットトリックを達成し、逆転勝利の立役者になった。 ゴール量産の理由のひとつとして郡司自身、「メンタル面の改善」も挙げる。「今までは子どもでしたからね」と苦笑いしつつ、こう続けた。 「試合中、うまくいかないことがあると、イライラしてしまって、気持ちを切り替えられずにいましたけど、監督やコーチから自分がやるべきプレーに集中することの大切さをいわれ、少しずつ大人になってきました。たとえば、チームが負けていたら、どうやって逆転しようか。そこに意識がいくようになったし、メンタル面がブレなくなった。自分のよさを発揮することに集中できていると思います」 卓越したスキルには、もともと定評があった。そこに“老獪さ”が加わり、“メンタル面の改善”も図られ、エースとしてひと回りもふた回りも進化した姿がある。 「これまで選手権の本大会に出られなかったけれど、今回、ようやく出場権を取ることができて、本当にうれしいです。目標はもちろん日本一。市船のエースとしてチームを勝たせなければいけないと思っています」(郡司) 高校サッカー界の雄である市船は、過去5回の選手権優勝を誇る。目指すは、第90回大会以来6度目の頂点。その道のりは、紛れもなくエースの双肩にかかっている。 (文・写真=小室功)