危機管理の失敗で「高島屋」は崩れたケーキの代名詞になる。(中嶋よしふみ・FP ウェブメディア編集長)
■高島屋は「スカスカおせち」の教訓に学べ
代表権のある専務が早期に謝罪会見をしたということで、高島屋も重大なトラブルであることはある程度認識をしていたのだろう。しかしそれでもまだ甘いと言わざるをえない。 冷凍ケーキ騒動は「スカスカおせち」を彷彿とさせる、そんな指摘も多数目にした。 これは2011年1月に、当時大流行していた共同購入型クーポンを提供する「グルーポン」が起こしたトラブルだ。1万円でおせち料理を販売したところ、実際に届いた商品が見本の写真とあまりにもかけ離れており、量も少なくまるで残飯のような酷い見た目だったことから大炎上した。 このトラブルは共同購入型クーポンのブームを一気に冷え込ませるほどの影響があり、しばらくは毎年正月になるたびにスカスカおせちの話題がぶり返された。 スカスカおせちが多くの人の記憶に強く残った理由は、当然のことながらおせちの写真に強烈なインパクトがあったからだ。そしてもう一つの理由が、正月という毎年行われる季節の大きなイベントに関わるトラブルであり、なおかつそのイベントを最も強く象徴するモノ(おせち料理)だった事で、スカスカおせちは長く語り継がれることになった。 クリスマス当日に崩れたケーキで大炎上、という今回のトラブルはスカスカおせちと全く同じ条件を満たしている。来年以降のクリスマスシーズンには冷凍ケーキの話がぶり返されることは間違いない。 クリスマスではなくても今後は崩れたケーキが、あるいは崩れた食品が「高島屋状態w」などとネットで揶揄される可能性も非常に高い。当然、そのたびに高島屋のブランド価値は毀損される。
■高島屋の誤算と勘違い。
高島屋はトラブルの話が長引く事を嫌って謝罪会見を素早く行い、返金・返品の対応、そして原因不明で調査打ち切りと宣言することで幕引きをはかりたかったのかもしれない。 しかし、数日で原因不明とか調査打ち切りなんておかしいと購入者の声が報じられ、監修のレ・サンスまで原因特定をすべきと声をあげるなど、幕引きどころか炎上に燃料を追加した状況だ。 高島屋の経営陣はトラブルの影響がスカスカおせちのように広く長く及ぶことを想像できているのか?と考えると、危機管理の対応として最悪と言わざるを得ない。 今回のケースでは原因を明らかにすることも顧客への謝罪の一環であり、それはとばっちりとも言えるレ・サンスの風評被害をとめることにもつながる。 今後も原因不明のままトラブルを放置するのなら、高島屋に出店しているケーキやスイーツのお店にも影響は出かねない。おそらく多くの企業がこの騒動をイライラしながら見ているだろう。現在は冷凍の宅食弁当が急激に増えているが、今回の騒動はそういった通信販売で冷凍食品を扱う企業にも影響が出かねないほどの大炎上だ。 冷蔵庫と別にストック用の冷凍庫も家にある筆者は、ここ数ヵ月でケーキも含めた多数の冷凍食品をネット通販で購入したが、崩れていた商品は一つもなかった。やはり今回の冷凍ケーキ騒動はあまりに異常と言わざるをえない。このような異常事態を原因不明のままで乗り切れると高島屋の経営陣が考えているのであれば、株主から会社経営を任された立場として無責任の極みだ。