唐十郎さん作「風のほこり」 東京・中野で追悼公演 29日まで
前衛的な表現を追求する「アンダーグラウンド」の演劇に軸足を置き、5月に84歳でこの世を去った劇作家、俳優の唐十郎さん作の「風のほこり」が東京都中野区の小劇場「芝居砦(とりで)・満天星」で上演されている。唐さんに刺激を受けた「アングラ第2世代」の演出家、俳優の金守珍(キム・スジン)さん(70)が主宰する劇団「新宿梁山泊」による追悼特別公演だ。 【写真まとめ】在りし日の唐十郎さん 「風のほこり」は、東京の下町、台東区で育った唐さんが母の話から着想を得た物語。1930年の浅草の芝居小屋の地下室を舞台に、劇団の文芸部の若者と、脚本を書いては持ち込んでくる義眼の女性を中心にストーリーが展開する。「この女性こそ唐さんの実母がモデルになっている」と金さんは話す。「日本が戦争へと向かう時代、唐さんの母は庶民の心情に視点を置いて同人誌に戯曲を書いていた」という。 唐さんは同作を、新宿梁山泊のために執筆し、2005年に初演された。今回、会場となっている芝居砦・満天星は同劇団の稽古(けいこ)場を兼ねるが、もとはこの作品に描かれる地下室を再現しようと設計された。 「自分は何者なのか、どこから来てどこに行くのか。唐さんは常にこんな問いかけをしながら創作活動をしていた」と金さん。「そんな唐さんのアングラ精神を継いでいきたい」と語る。 29日まで。詳細は同劇団のホームページ。【明珍美紀】