父が語っていた 吉田沙保里の今後
■新ルール、新階級にも順応 吉田の五輪4連覇に死角はない? 沙保里は、文句のない内容で勝利を収めたことと、新階級と新ルールによる初めての国際大会に勝利したことで、2年後にせまったリオ五輪への自信につながったようだ。では、五輪4連覇へ向けて死角はまったく見当たらないのか。 五輪3連覇を果たし、アレクサンドル・カレリンの記録を抜く世界13連覇を果たした直後、栄勝さんは一人のレスラーとしての娘を、こう分析していた。 「五輪へ出る人はすごいんですよ。それを3回も勝っているんだから、普通じゃないよね(笑)。沙保里みたいに20年以上もレスリング選手をやっているベテランになってきたら、監督、コーチとお互いに意見を交わしながら、相談も必要だと思うんだけどね」 ■生前の父 引き際について、また後輩の指導などを案ずる 非凡なレスラーと素直に褒め称えながら、娘はまだ子どもっぽいところが残っていると心配もしていた。そしてはっきりとは言わなかったが、強いまま引退して後輩を指導して欲しい、と選手としての引き際を口にするなど、将来を案じていた。 「アテネ五輪のころは、まだ子どもだった。北京で2連覇して、ようやくなんとか持ちこたえていたんですけども、ロンドンのときも直前に負けたから、不安だったろうね。負けるのが嫌いなくせに、優しすぎるのよ(笑)」 これまで沙保里が陥った五輪前の不安は、栄勝さんの助言によって切り抜けてきた。これからは、自分の力で切り開かなければならない。不安を感じていただろう今大会への出場は、自分で決めるより前に「親父なら、試合に出ろと言うだろうから」と、兄から言われたことで背中を押された部分もあるという。吉田沙保里というレスラーは、兄の言葉や父の思い出など、新たな助言の法則を発見しつつあるのかもしれない。 (文責・横森綾/スポーツライター)