砂地でも米作り 「ビニール水田」半世紀超続く 石川県内灘町
砂丘の地中にビニールを敷き、水を張って米を植える――。戦後の食料増産を目的に造成されたといわれる「ビニール水田」。水はけが良く稲作には向かないとされる砂地で、米作りを可能にしてきた。能登半島地震で液状化の被害を受けた石川県内灘町では、造成から半世紀以上たった今も使い続けられている。 【上からの写真】 内灘町の砂丘地に造成されたビニール水田 ビニール水田とは、保水性がない砂丘地などで、地中50センチほどの深さにビニールシートを敷き、水がたまるようにした水田。コンクリートブロックを埋めて四方を囲み、水の流出を防いでいる。 山形県や茨城県、鳥取県など各地で戦後の食料増産で一時期増えたとみられるが、「今も残る地域があるかは把握できていない」(農水省)。石川県の担当者も正確な場所は不明だとし、県民にも“幻”となりつつある。 海岸砂丘で水田が少ない同町では、国や自治体が補助金を投じ、1969年に30ヘクタール超のビニール水田を整備した。その後、86年に河北潟の干拓地ができ、減反政策もあって作付けは縮小。JA石川かほくによると、現在は4ヘクタールで3人の生産者が作り続けている。 生産者の一人、川辺俊一さん(81)は地震の影響で、手がける水田17ヘクタール超のうち85%で作付けを断念した。今年は、ビニール水田2・7ヘクタールと、河北潟で液状化の被害を免れた1・1ヘクタールに作付けした。川辺さんは「家に直接買いに来てくれるファンもいる。作れる農地がある限りは作り続けたい」と意欲を燃やす。 一方、「今は水を入れ続けないと(水が漏れて)たまらない」(川辺さん)など課題もある。同町によると、造成以来ビニールの交換はしていない。町史には、造成から5年以上経過した水田では、排水不良で減収した所も見られたとする記述も残る。
日本農業新聞