外信コラム ソ連は遠くなりにけり 旧構成国のアゼルバイジャンは独自の発展、若者はロシア語より英語
南カフカス地方の旧ソ連構成国、アゼルバイジャンで開かれた国連気候変動枠組み条約第29回締約国会議(COP29)を取材するため11月、首都バクーに10日間余り出張した。同国を訪れたのは初めてだったが、驚いたのは予想していた以上にロシア語が通じなかったことだった。 【写真】アゼルバイジャンの首都バクーの代表的な高層ビル「フレームタワー」 体感的には、ロシア語を解すのは40~50代の人々で4~5人に1人、20~30代では10人に1人といったところだった。一方、会場にボランティアとして大勢配置された大学生世代の若者はみな、洗練された英語を話していた。「ロシア語には魅力がない?」と尋ねると、「世界で働くには英語を学ぶのが一番です」との言葉が返ってきた。 物価の高さにも驚いた。マクドナルド(ロシアではウクライナ侵略後、露資本に経営が移って店名も変わったが、メニューはほぼ一緒)の価格はロシアの約3倍。ハンバーガー2個とポテトだけで日本円にして約1500円もした。カスピ海の油田で潤うアゼルバイジャンの発展を実感した。 1991年の旧ソ連崩壊から30年以上。他の旧ソ連諸国でもロシア語話者が減る一方、独自の発展が進んでいる。中村草田男は昭和初年に「降る雪や明治は遠くなりにけり」と詠んだが、私にも「ソ連は遠くなりにけり」との句が浮かんだ。(小野田雄一)