異例ずくめの朝鮮大学校生の訪朝 浮き彫りにした韓国敵視政策の迷走ぶり
朝鮮大学校(朝大・東京都小平市)の4年生ら約50人が27日、経由地の北京から平壌に向けて出発したと各メディアが報じた。学生たちは1カ月ほど滞在するという。今後、11月までに数回に分けて計150人ほどの学生が訪朝する。 新型コロナウイルスの影響で北朝鮮が国境を一時閉鎖していたため、今回の学生たちの訪朝は2019年以来になる。だが、関係者らによれば、今回の訪朝は5年前までのものとはかなり異なった訪問になりそうだ。北朝鮮本国からは、訪朝の日程について「朝大側からの意見は受け入れない」という通達があった。北朝鮮に住む親類縁者との面会は「ケースバイケース」とする一方、親族の自宅を訪問することは不許可になった。 これまでの朝大生の祖国訪問は「学習が三分の一、見学が三分の一、親族訪問などその他の日程が三分の一」というのが相場だった。学習は今回も平壌にある朝鮮総連専用の研修所で行われるが、宿泊先も兼ねるという。北朝鮮では従来、総連関係者らが訪朝すると平壌旅館(ホテル)が使われるケースが多かったが、国境閉鎖期間中に利用者がほぼなくなり、改修が必要だと言う情報もある。一方、研修所に学生を集める理由として、当局が親戚の自宅訪問を認めなかったことも重なり、「北朝鮮市民との接触を減らす狙いがあるのではないか」という見方が、在日朝鮮人の間で出ている。 また、朝大生には朝鮮総連の活動家の同行は認められず、朝大関係者だけが同行を許されたという。北朝鮮は今年、ロシア人観光客などを受け入れる一方、在日朝鮮人関係者の自由な訪朝は依然、認められていない。 関係者の1人は異例の措置の背景について「金正恩総書記が昨年末に出した韓国敵視政策の影響ではないか」と語る。朝鮮総連の関係者のほとんどは戦前、朝鮮半島の南半部(今の韓国)から日本に渡ってきた人々。北朝鮮を政治的に支持しているが、「父祖の地は韓国」と考えている人も多い。北朝鮮が南北の平和統一を放棄したことに、一番がっかりしているのは在日朝鮮人かもしれない。逆にみれば、北朝鮮としては在日朝鮮人の扱いに苦慮しているとも言える。