クマ問題「猟友会一任は限界」 専門家はドローン活用を提言「プロフェッショナルの人材育成が不可欠」
専門事業者の参入を妨げる猟友会の「政治的な利権」
国では必要な技能や知識を有する事業者に捕獲を認め、有害駆除などの業務委託を行う「認定鳥獣捕獲等事業者制度」を設けているが、クマ類を対象とした装薬銃(火薬を使用した銃)による猟法を認められた事業者は本州でわずか6社、北海道で2社のみ。その中でも岩手や栃木などでは、地元猟友会がそのまま事業者認定を受けており、担い手の受け皿がないのが現状だ。 「政治的な利権も絡んでいます。クマの捕獲は年間で数百万円ほどの収入になる場合もあり、猟友会にもうまみがあるので、認定事業者制度ができる際には反対意見も多かった。現在、事業者が新規参入するには、猟銃免許、狩猟免許、狩猟者登録などの一般的な資格を有し、3年以内に捕獲を適切に実施した実績を持つ狩猟者を10人以上集めないと登録ができない制度になっています。もちろん、銃を使用する以上ある程度の資格や登録は必須ですが、地元猟友会が幅を利かせていて、新規事業者がおうかがいを立てないと活動ができないというところも多いです」 ネット上では、一部で「クマのすみかを奪っているのは人間」「クマの出るようなところには住むな」という声もある。出没地域の住民はどのような行動を心掛けるべきなのか。 「クマがいつ出てもおかしくないという前提で、柿の木や家庭菜園などは取り残しがないようにする、外飼いの犬の餌を出しっぱなしにしないなど、誘因をしない努力は必要。地方行政にはクマ対策まで回せる予算は多くはありませんが、国からの補助金や森林環境税などを原資に、下草の伐採や電気柵の設置などで、クマの分布の前線を押し戻していくしかありません。 去年のような市街地にも出る状況で、そんなところに住むなというのは無理な話。一方で限界集落や山の中の一軒家など、行政がどこまで対策を行うかは一概には言えません。また、登山や山菜取りなどでクマの生息地に入る場合は、ある程度は襲われても自己責任。クマ鈴やクマ除けスプレーの携行など、会わないような努力や対処法は考えておくべきです」 クマの駆除を巡っては、一部の環境保護団体や動物愛護団体からの抗議が殺到することも問題化している。研究者の中には、クマを殺処分することに葛藤はないのだろうか。 「全国に200万頭以上いるシカや推定90万頭ほどとされるイノシシと違い、ツキノワグマは本州でおおよそ数万から10万頭程度、北海道のヒグマは最低1万2000頭ほどしかいないと推定されています。四国など絶滅が危惧されている地域もあり、地域や個体群ごとに対策を練る必要があります。今回、指定管理鳥獣となったことで、捕獲や駆除以外にもゾーニングやモニタリング調査など、交付金でやれることはたくさんあるというのは申し上げた通り。個体数調整だけが一人歩きしないような施策や、苦痛を与えない駆除の仕方についてはもっと議論されていくべきです」 クマと人、お互いの生活圏を守っていくため、適切なすみ分けが求められている。
佐藤佑輔