ブルーベリー栽培、全国に広がる 病害虫に強い⇒農薬不使用⇒消費者支持
ブルーベリーの栽培が拡大している。機能性や気軽に食べられる簡便さを強みに、栽培面積は20年で2・8倍に増え、栽培地も東京都を筆頭に45都道府県に広がった。病害虫に比較的強く、農薬不使用でも栽培しやすい。農薬不使用は、消費者の支持にもつながっている。 【画像】農薬を使わずにブルーベリーを栽培する 日本ブルーベリー協会によると、国内に導入されたのは1951年で、長野や岩手県が産地として先行した。研究が進むにつれて酸性土壌でも育つなど栽培適地の広さが分かり、普及が加速。農水省によると、2021年の栽培面積は1006ヘクタールで、うち東京都の121ヘクタールが最多、続いて長野86ヘクタール、群馬77ヘクタールと続く。 需要面では、果実に含まれるアントシアニンが目の働きを補助する栄養素として注目され、健康食品会社がサプリメントを販売するなどし、1990年ごろから消費者に浸透。食べる際に皮むきや刃物が不要など、簡便性を重視する昨今の消費動向にも合致する。 中央果実協会が2023年に全国の男女2062人を対象に実施した調査では、どのような果物であれば多く食べるようになるかとの質問に対し、最多の回答は「外観が悪くても割安」が39%で、次いで「皮のままなど簡単に食べられる」が31%。日本ブルーベリー協会は、こうした需要動向に加え、「見た目がおしゃれで、若年層も手に取りやすい」とする。
環境配慮に合致
栽培に比較的手がかからないことも普及を後押しした。樹高は大きいものでも2メートル程度で、手が届きやすく作業負担が少ない。整枝や剪定(せんてい)など基本的な技術は必要だが、最も労力のかかる収穫も、摘み取り園にすれば省力化できる。 東京都三鷹市でブルーベリーを栽培する吉野康雄さん(70)は、売り上げの85~90%を摘み取り園が占める。40年ほど前にブドウなどから切り替え、現在、80品種1500本ほどを栽培する。入園料300円で自由に試食でき、持ち帰りは100グラム280円。年々来園者が増え、当初一つだった園地は三つにした。老若男女を問わず、リピーターも多いという。 消費者の支持を集める強みの一つが、農薬を使わない栽培だ。「ブルーベリーは比較的病害虫に強いため、農薬を使わずに育てる農家は多い」(日本ブルーベリー協会)。吉野さんも不使用だが、イラガ類やうどんこ病が見られるものの、収量への影響はほぼない。農薬の不使用は、果実を直接口に運ぶ摘み取り園では特に、消費者に支持されやすい要素になるとみる。吉野さんは「環境配慮を重視する時代の流れともマッチする」とも指摘する。 (南徳絵)
日本農業新聞