マウスピース矯正、ここに注意! ~トラブル増で専門家警鐘~
◇不向きな症例も
マウスピース矯正には向き不向きがあるとされる。「文献をよく読むと、軽度の不正咬合(ふせいこうごう=かみ合わせの悪さ)に関してはワイヤー矯正と遜色ないが、複雑な不正咬合ではワイヤー矯正の方がよいと書いてある。症例によっては限界があることを分かってほしい」と常盤理事。 ワイヤー矯正に比べ歴史の浅いマウスピース矯正を「発展途上」と位置付ける同理事は、今後の課題として診断基準の確立、不測の事態の予防策とリカバリー技術の習得、使用状況のモニタリング、治療システムのアップデートを挙げる。その上で、利用者に対し「知識や技術、経験を蓄積した術者の診療を受ける必要がある。ネットやSNSの広告に惑わされず、しっかりとした医療機関を選んでほしい」と注意喚起する。
◇安心治療のカギは?
マウスピース矯正を安心して、かつ安全に受けるためのカギは何か。佐藤副会長はまず、ワイヤー矯正も選択できる医院の受診を呼び掛ける。「マウスピース矯正に適した症例なのか、(不測の事態が起きたときの)リカバリーをどうするかといった判断は、ワイヤーでの治療ができる歯科医でないと難しい」というのが理由だ。 治療費をめぐる慎重な対応も要請する。矯正は基本的に自由診療で支払額がかさむため、トラブルがあったときの損害も大きくなりがち。そうした事態に陥らないよう、契約書を交わすまで装置発注費などが生じないことや、治療の進行に合わせた精算をどのような基準で行うかについて確認を促す。契約時には治療費の内訳に関する説明を求め、分割など支払い方法を検討する必要があると指摘する。 さらに、同副会長は「治療に入ることをせかす診療所には気を付けよう」と強調する。患者自身の事前の心構えなどが大切と考えているためで、この観点からは、患者が決心するまで待てる医療機関を勧めている。(平満)