バスに変身、世界初の二刀流 阿佐鉄DMVで室戸岬目指す
【汐留鉄道倶楽部】四国南東部の突端にある室戸岬(高知県室戸市)。台風情報などで地名を見聞きする機会は多いが、公共交通機関だけで訪れるのは結構難しい。旧国鉄時代に計画された阿佐線は、徳島市から南に延びるJR牟岐線と土讃線・御免(高知県南国市)を室戸経由で結ぶ予定だったが財政難で工事は凍結、一部区間を引き継いだ第三セクター鉄道とバスを乗り継がないとどちら側からも到達できない。このうち徳島県側を担う阿佐海岸鉄道(阿佐鉄)は2021年12月から線路と道路の両方を走れるデュアル・モード・ビークル(DMV)を運行。DMVの営業運転として世界初、今風の表現で「二刀流」を前面にアピールしている。 【動画】徳島のDMVが営業運行開始 世界初、道路と線路二刀流 21年
企画乗車券「四国みぎした55(ゴーゴー)フリーきっぷ」でDMV、バス、鉄道を乗り継ぎ、室戸岬を目指した阿佐線に思いをはせた。この切符は四国南東部の国道55号沿いがエリアとなっている。具体的にはJR牟岐線(徳島―阿波海南=徳島県海陽町)、阿佐鉄(鉄道区間は阿波海南―甲浦=かんのうら、高知県東洋町)、高知東部交通バス、三セクで2002年7月に開業した土佐くろしお鉄道ごめん・なはり線(御免―奈半利=高知県奈半利町)、土讃線(御免―高知)が乗り降り自由。料金5800円で3日間有効。新型コロナウイルス禍による行動制限の緩和もあり、6月に発表された23年度決算では企画切符販売収入が前年比180・7%増の168万円に伸びた。 徳島から牟岐線のディーゼル列車で約2時間かけ阿波海南に到着すると、徒歩15分ほどの複合施設・阿波海南文化村を始発とするDMVが道路を走ってやって来た。マイクロバスを改造した車体はエンジンルームが運転台の前に張り出しており、見た目は旧式のボンネットバスを現代風にしたような雰囲気だ。定員21人の車内はマイクロバスそのもので、運転席には自動車と同じハンドルが付いている。駅の横にある阿波海南信号場(モードインターチェンジ)でボンネット下に搭載した鉄道用の前車輪を引き出してレールにセットすると、前タイヤが持ち上がる。さらに後車輪も引き出してレールにセットするが、後タイヤはレールに密着したまま。道路上と同じく後タイヤで推進する。この間約20秒前後で転換(モードチェンジ)完了。約10㌔先の甲浦まで、大人片道運賃は鉄道区間だけで500円。バスを含む全区間を乗り通すと800円だ。