バスに変身、世界初の二刀流 阿佐鉄DMVで室戸岬目指す
阿佐海岸鉄道は1992年3月の開業以来赤字続きで、2023年度決算では、運賃収入は12・2%減の2274万円にとどまった。国や沿線自治体の補助金などを加味しても886万円の赤字と、厳しい経営が続く。企画切符が好調だった半面、定期券収入は減少、DMV自体が目的の乗車が相対的に増える傾向が見て取れる。一方で地元利用者にとっても乗り換えなしで鉄道とバスを乗り通せるのがメリットで、23年8月には試験的な奈半利延伸も実現した。ただDMVは専用区間以外の鉄道路線を走れず、牟岐線など他の鉄道路線に乗り入れることができない。さらに乗車は予約制で空きがある場合のみしか飛び込み乗車できない上、立ったままの乗車不可などの制約がある。実際に乗ってみると座席に余裕があったが、もう少し利用しやすくはできないだろうか。 阿佐海岸鉄道は鉄道部分が高架になっており「災害時に鉄道、道路のいずれかが壊滅しても持続可能な交通機関」として、DMV導入に興味を持つ鉄道事業者などからの視察を積極的に受け入れる姿勢を打ち出した。自社サイトにアップした最新の事業報告書では「営業運転を続けながら走行データを蓄積し、長期耐久性を検証する」と明記している。大災害は起きてほしくないが、先駆者としての実験的意義もあり、行方を見守りたい。
☆共同通信・寺田正