バスに変身、世界初の二刀流 阿佐鉄DMVで室戸岬目指す
DMVは計3台あり、太陽をイメージした赤、太平洋をイメージした青、徳島特産のスダチをイメージした緑に色分けされている。全長約8㍍、重さ約7㌧で、鉄道車両より軽く燃費性能が良いという。一般的な鉄道車両は車体両端に4輪ずつセットの台車があり、走行音は「ガタンゴトン、ガタンゴトン」と表現されるが、DMVは自動車と同様前後に2輪ずつの4輪で、「ガッ、タン」「ゴッ、トン」と間を置く独特のリズムを刻む。トンネルでは音が増幅され、高架を走る鉄道区間の一部では海が見えた。途中2駅に停車して約20分後には県境を越え甲浦に。甲浦信号場で鉄輪を格納しバスに戻るモードチェンジの様子はモニターで車内に映し出された。バスモードで海岸沿いに再び県境を越えて徳島県側に戻り、「道の駅宍喰(ししくい)温泉」(海陽町)が終点となる。明らかに珍しいDMV目当ての乗客や観光客が目立ち、鉄道とバスのモード転換を待ち構える撮影者もいた。
海陽町はゴルフの尾崎将司選手の出身地で、道の駅宍喰温泉にはDMV関連の展示やジオラマに加え、同選手を含む尾崎三兄弟ゆかりのゴルフ用具などが公開されている。プロ野球阪急(現オリックス)の監督として1970年代に日本シリーズ3連覇を果たした上田利治さんのユニホームなどもある。海陽町や東洋町はサーフィンなどマリンスポーツが盛んという。道の駅では海が見える日帰り温泉で一休みした。ぬるぬるした独特の感触だった。 DMVは土曜休日の1便だけ、バスモードのまま国道55号を約1時間かけ、室戸岬の先にある「海の駅とろむ」間を往復するが、55フリーきっぷでは延長区間は乗車できない。路線バスに乗り換え、太平洋の雄大な景色をながめながら室戸岬に到達した。室戸市は国連教育科学文化機関(ユネスコ)から、貴重な地形や地質を備えた自然公園「世界ジオパーク」に認定されている。「室戸世界ジオパークセンター」では、地震で海底が隆起してできた室戸市一帯が今も少しずつ隆起していることが学習できた(入館無料)。室戸岬突端を望む国道沿いには、坂本龍馬とともに活躍した明治維新の志士・中岡慎太郎像(台座含め高さ約14㍍)が、太平洋に向け建っていた。