40年ぶり1万円札「顔」交代 新紙幣、世界初3Dホログラムを採用
日銀は3日、約20年ぶりにデザインを一新した3種類の新紙幣(日本銀行券)の発行を始めた。「日本の資本主義の父」と称される実業家の渋沢栄一(1万円札)、津田塾大創始者の津田梅子(5000円札)、破傷風の治療法を確立した微生物学者の北里柴三郎(1000円札)の肖像がそれぞれ描かれたお札は徐々に金融機関に引き渡され、世の中に流通する。 【写真で見る】新紙幣、こんなデザイン 日銀本店(東京都中央区)と全国32カ所の支店は3日朝に新紙幣の発行業務を開始した。本店では植田和男総裁が「キャッシュレス化が進展しているが、現金は今後とも大きな役割を果たしていく。国民に広く行き渡り、経済を支える潤滑油となることを期待する」とあいさつ。金沢敏郎発券局長が「発行を開始してください」と指示すると、梱包(こんぽう)された新紙幣が金融機関の現金輸送車に積み込まれた。 3日午前に日銀本店を視察し、記者会見した岸田文雄首相は「日本の資本主義、女性の活躍、科学技術イノベーションを代表する人物を肖像とする、まさに時代にふさわしい紙幣だ。日本経済に元気を与えてくれることを期待したい」と述べた。 日銀は6月末時点で新紙幣を約52億枚(見込みベース)用意。2024年度末までに計74億8000万枚を刷る計画だ。デザインの刷新は04年11月以来。1万円札の「顔」の交代は1984年に聖徳太子から福沢諭吉になって以来、約40年ぶり。偽造防止のため、世界初となる3Dホログラムを施し、傾けると肖像が回転しているように見える。裏面には、1万円札に東京駅の丸の内駅舎、5000円札に藤の花、1000円札に葛飾北斎の富嶽三十六景が描かれている。 3日は1兆6000億円分の新紙幣が銀行などに引き渡された。渋沢栄一の出身地が埼玉県深谷市であることから、埼玉りそな銀行は地域を盛り上げようと、約100店舗で初日から新紙幣への両替などに応じた。メガバンクの両替業務は原則4日以降になるという。 店舗などの新紙幣の対応にはばらつきがあり、財務省によると、現金自動受払機(ATM)は9割以上、鉄道切符の券売機やコンビニ・スーパーのレジも8~9割が新紙幣に対応する。しかし、駐車場の精算機や飲食店の券売機は約5割、飲料の自動販売機は2~3割程度にとどまる。 旧紙幣も従来通り店舗などで使用できる。日銀は「旧紙幣が使えなくなる」などとかたった振り込め詐欺などに注意するよう呼びかけている。【浅川大樹、池田直】