「ニューヨークタイムズ紙」が「2024年に行くべき52ヶ所」で第3位に選んだ「意外な日本の地方都市」
コロナ禍で一時失速したものの、円安の追い風などもあり、再び勢いを増しているインバウンド需要。日本経済の起爆剤としても期待されている一方で、海外観光客は大都市圏に集中しており、オーバーツーリズムの問題なども深刻化しつつある。 【マンガ】カナダ人が「日本のトンカツ」を食べて唖然…震えるほど感動して発した一言 大都市圏に集中する海外観光客を地方に呼び込み、かつ、観光客過多のオーバーツリーズムを避け、経済的にも地域に寄与するにはどうすればよいか? そのヒントとなるのが「ラグジュアリー観光」だと、世界の富裕層観光地に自ら足を運んだ経験のある作家・山口由美さんが『世界の富裕層は旅に何を求めているか? 「体験」が拓くラグジュアリー観光』(4月17日発売・光文社新書)で指摘している。安全や快適さだけではない、旅に大金を投じる世界の富裕層が求めている「本物の体験」を描き出す本書より、ラグジュアリー観光による地方創生の可能性を紹介する。 ※本記事は山口由美著『世界の富裕層は旅に何を求めているか? 「体験」が拓くラグジュアリー観光』から抜粋・編集したものです。
日本の地方が持つ、とてつもないポテンシャル
日本では、まだまだインバウンドの観光客は大都市圏に集中している。 2019年の観光庁「訪日外国人消費動向調査」によれば、インバウンドの都道府県別訪問者数は、1位の東京都が年間約1410万人、2位の大阪府が約1152万人、3位の千葉県が約1048万人、4位の京都府が830万人と続く。大都市圏が圧倒的に多い。 同じく消費額で見ると、1位の東京都が1兆5388億円と突出して多く、2位の大阪府が8468億円、3位の北海道が2888億円、4位の京都府が2794億円となっている。 訪問者数では8位の239万人の北海道が上位に食い込んでいるのは、ニセコなどのスノーリゾートに高額な消費を後押しするラグジュアリーな宿泊施設が充実していて、滞在も長くなる傾向があるからだろう。 訪問者数で見ると、たとえば14位以下は年間100万人以下、最下位の5県は10万人以下、消費額では、その差はもっと開いており、29位以下は100億円以下であり、首位の東京都とは150倍以上の差となっている。 つまり、日本のインバウンドブームとは、ごく一部の大都市圏でおきている出来事ということであり、その結果、オーバーツーリズムの問題が生じているのだ。 2019年の訪日外国人客は、観光庁の数字によれば、全体で3188万人だった。 2023年の訪日外国人客は約2506万人だった。 東京や大阪に観光客が集中している状況を見れば、都道県別訪問者数もさほど大きな変化はなく推移することが予測されている。 だが、変化の兆しはいくつかある。 たとえば、ニューヨークタイムズ紙の「2023年に行くべき52ヶ所」では岩手県の盛岡市が2位、「2024年に行くべき52ヶ所」では山口県の山口市が3位に選ばれた。 2023年は、ロンドンに次いでの2位、2024年は、北アメリカで見られる皆既日食、パリに次いでの3位だった。 これらのニュースは、いずれも大きな話題を呼んだ。 ちなみに2019年の都道県別訪問者数のランキングでは、岩手県は39位、山口県は35位である。 ポイントは、海外の記者が盛岡や山口を「発見」してリポートしたものが高く評価されたことにある。この事実は、日本の地方には、とてつもない潜在的魅力があるということを意味している。第二の盛岡や山口は、日本国内にいくらもあるだろう。 もうひとつ、2023年の大きなニュースは、鳥取砂丘にマリオット・インターナショナルのリゾートが2026年に開業すると発表されたことだった。1室6万~10万円のラグジュアリートラベラー向けのホテルだという。 盛岡や山口と同様、なぜ鳥取砂丘なのか、といったニュアンスの報道が多かったように思うが、世界的に見ても砂丘とラグジュアリーホテルは相性が良い。 アフリカではナミビアのナミブ砂漠、サハラ砂漠があるモロッコ、チュニジアなどに、多くの砂漠リゾートがある。アジアでもベトナムのムイネーが知られており、規模的にさほど大きくない砂丘であることと、アジアの文化とのコラボレーションは、鳥取砂丘と共通点がある。鳥取砂丘のリゾート開発はむしろ遅すぎたくらいだ。 鳥取県も2019年の都道府県別訪問者数ランキングでは38位である。