徳地島地の旧案野酒場の建物、国の有形文化財へ【山口】
山口市徳地島地商店街の一角にある旧案野酒場の建物4件が、国有形文化財に登録される見通しとなった。国の文化審議会が22日、文部科学大臣に答申した。明治期に建てられた建物の古さに加え、商店街のにぎわいの歴史を伝えると高く評価された。 答申されたのは、店舗兼主屋と座敷、酒造場、門および塀。木造2階建ての座敷(52平方㍍)と同平屋一部2階建ての酒造場(457平方㍍)、木造の門(間口1・6㍍)と塀(総延長9・9㍍)は、商店街の繁栄の基盤となった前身の紙問屋「伊勢屋」の建物として明治前期に建てられた。 伊勢屋が廃業した後、1930年から案野酒場が開業。増改築を加えながら55年ごろに木造2階建ての店舗兼主屋(165平方㍍)が建てられた。酒場は98年まで営業した。 もともと紙蔵だった酒造場には、こうじ室や窯など酒造りで使われた名残を残し、奥行き30㍍と長大な造り。通りに面した店舗兼主屋にも酒を売るためのカウンターがある。座敷の2階は白しっくい塗りで土蔵造り風の外観を特徴に持つ。 登録申請に当たり、調査して所見を書いた県ヘリテージマネジャーの原田正彦さん(70)は「商店街の歴史を伝える古い景観を保っているところが一番大きいポイントだ」と話した。 建物は10月、山口観光コンベンション協会徳地支部(池田大乗支部長)主催の商店街再興イベントで、ワークショップとコンサートの会場として使用された。 空き家バンクで購入した所有者の小林國治さん(59)=福岡県直方市=は「倉庫に活用しようと思っていたが、調べてみると歴史的な価値があることが分かり、登録を市に相談した。民宿など地域での有効な活用を期待している」と話した。 登録されれば、市内の国有形文化財(建造物)は7月の船越家住宅主屋に続いて計15件。萩市でも答申があったため、すべて登録が決まれば県内では計136件となる。