史上最も「新鮮」な監督が揃ったセ・リーグ
巨人と阪神という歴史ある人気チームの監督に就任した高橋監督と金本監督だが、過去の両チームの新人監督の成績を見てみるとその結果には随分と差がある(表3-1、3-2)。巨人の新人監督はプロ野球初年度の藤本定義監督を除くと過去10人、そのうち3人が1年目で優勝を果たしている。また1年目に優勝を逃した7人のうち3人は2年目で優勝しており、就任から2年以内で優勝できなかった監督は王監督と堀内監督だけだった。 一方阪神の過去17人の新人監督のうち1年目に優勝したのは1937年の秋リーグを制した石本監督のみ。2年目に優勝したのも2005年の岡田監督しかいない。逆に2年目終了を待たずに退任した監督は5人もいるのである。ほとんどの新人監督が結果を出している巨人の監督になった高橋監督と、新人監督が苦しみ続けてきた阪神で監督のキャリアをスタートさせる金本監督。まずはその初年度の結果に注目したい。
そして今シーズンもう1人の新人監督がDeNAのラミレス監督だ。MLBではメジャーまで昇格し、NPBでは2000本安打を達成するほどの実績を残し引退した。引退後はBCリーグの群馬やオリックスでシニアディレクターなどを務めていたが、NPBでの指導者経験はない。このように日米で選手としてのキャリアを持ち、NPBでの指導経験はないという元選手が監督に就任するというパターンは、実はプロ野球史上初めてのことである。 表4は過去の外国人監督の経歴を一覧にまとめたもの。これをみると分かるように過去の外国人監督は、米国でプレーし引退、米国で指導者として実績を残してから日本に監督やコーチとして来日するというパターンが一番多かった(ルーツ、コリンズ、ヒルマン、バレンタイン)。
また日米でプレーした選手が、引退後に米国やNPBで指導者としての実績を積み日本で監督になるというパターン(ブラウン、ブレイザー、与那嶺)もあったが、米国でもNPBでも指導者経験のないラミレス監督はこれにもあてはまらない。ラミレス監督同様に指導者経験なしで監督に就任した外国人監督は過去に1人、1958年に阪神の監督に就任した日系2世の田中義雄監督だけだ。ただ田中監督の場合、米国でのプロ経験はゼロでNPBだけで活動した野球選手だった。米国の野球も経験したラミレス監督はこのケースとも異なっている。 このように過去に例のないキャリアで監督となったのがラミレス監督なのだ。プロ野球史上初の経歴を持つラミレス監督がどのような結果を残すのか、今後日本球界が広く指導者を集めるきっかけにもなる可能性を秘めているチャレンジである。