毎日のアスピリンが大腸がんを予防、免疫の監視を強化か、思いがけない効果を示す研究結果
日本では罹患数1位のがん、「予想していませんでした」と研究者、血栓を防ぐ薬でもあり出血などのリスクも
アスピリンは筋肉痛や頭痛をやわらげたり、熱を下げたりする薬としてよく知られている。また、低用量であれば血液をサラサラにして、脳卒中や心臓発作の原因となる血栓を防ぐのにも使われる。そして、2024年4月22日付けで医学誌「Cancer」に発表された新たな研究により、この薬が大腸がんの予防にも役立つことが示唆された。 ギャラリー:炎症を抑える食べ物とは、がんにも影響 写真6点 大腸がんは結腸または直腸に発生するがんであり、世界保健機関(WHO)によれば、がんのタイプとしては世界で3番目に多く、がんによる死因としては2番目に多い(編注:国立がん研究センターの「がん情報サービス」によれば、日本では大腸がんは罹患数で1位、死亡数で2位)。 WHOによると、2020年には全世界で新たに190万人以上が大腸がんと診断されており、この数字は今後も増えると見られている。また、米国立がん研究所のデータからは、1990年代以降、米国では50歳未満の大腸がんの発生率が上昇しており、若者の死亡例も増えていることがわかる。 今回の新たな論文によると、毎日アスピリンを服用した大腸がん患者は、リンパ節に転移する割合が低く、腫瘍に対する免疫反応が強かったという。この研究は、免疫系ががん細胞を探し出す能力がアスピリンによって高められている可能性を示唆している。 「こうした効果は予想していませんでした。アスピリンは主に抗炎症薬として使われているからです」と、論文の著者の一人であるイタリア、パドバ大学のマルコ・スカルパ氏は言う。氏が指摘する通り、この研究で示唆されているのは、アスピリンが想定とはやや異なる働きをして、免疫系の監視機能の反応を刺激し、大腸がんの進行を防いだり遅らせたりしているということだ。 人の免疫系は常に体内を監視して正常でない細胞を探している。そしてがん細胞を見つけると、体外から侵入してくる細菌やウイルスを殺すのと同じようにそれを殺すのだと、米スタンフォード大学の外科医で大腸の手術を専門とするシンディ・キン氏は言う。 「アスピリンとがんに関する知識は大きく進化しています」と語るのは、米ヒューストン・メソジスト病院のがん専門医で、大腸がんを専門とするマエン・アブデルラヒム氏だ。ただし、アスピリンがどのように働いてがんの進行を予防したり遅らせたりするのか、また、患者の中でもどのような人が毎日のアスピリン服用の恩恵を受けるのかについては、まだわかっていない点が多い。 アスピリンを継続的に服用している人は大腸がんのリスクが低くなるが、消化管から出血する可能性などの「リスクとのバランスをとる必要があります」と、米ダナ・ファーバーがん研究所の結腸直腸がんセンターの共同ディレクターで、がん専門医のジェフ・マイヤーハート氏は言う。