なぜか「減税」を嫌がる財務省 「歳出権の拡大」で各省に恩売り…天下りへ 官僚主導の財政支出、民間に任せた方がうまくいく
【日本の解き方】 国民民主党が掲げている「年収103万円の壁」撤廃について、基礎控除を75万円引き上げた場合、「7・6兆円の減税になる」「高所得者の減税額が大きい」などと報じられた。 【年代別でみる】石破内閣を「支持する」が「支持しない」を上回った唯一の年代は? 筆者は先日の本コラムでは「仮に基礎控除を75万円引き上げると、所得税率が平均10%、住民税率が10%とすれば、7兆円程度の減収額となる。もっとも、この程度であれば、名目5%成長すれば自然増収で手が届く範囲であるので、それほど心配する必要はないともいえる」と書いた。 少し財政をかじったことがある人であれば、この程度の減収の試算をするのは簡単だが、マスコミが記事にする際には財務省に聞くことが多いのだろう。 2023年度の税収は72兆761億円だった。名目国内総生産(GDP)が1%変化したときに税収が何%変化するかを示す「税収弾性値」は一般的には「2~3」なので、名目成長率が5%だと、税収は10~15%、つまり7兆~10兆円程度増加することになる。 また、名目5%成長を実現するには、インフレ率を2~4%にすればいい。このためには2%のインフレ目標について、日銀が利上げを遅らせる「ビハインド・ザ・カーブ」の運営を行う。その上で、GDPギャップ(潜在的な供給力と実際の需要の差)をなくすような積極財政をするだけだ。 それにしても、財務省がなぜ減税を嫌がるのか、一般の人には理解できないだろう。その一方で財政支出はそれほど抵抗なく行う。減税も「租税歳出」といわれ、財政の理論では財政支出と同じことなのに、この態度の差は何か。実はここに理由がある。 財務省は増税を好むが、増税すると歳出を膨らますことができる。これを財政用語では「歳出権の拡大」という。これこそが、財務省の権限の源であり、各省に対して売れる恩でもある。歳出権を各省にばらまいて、そのご褒美として、各省の団体に天下りできるというのが望ましい。 一例を挙げれば、経団連が「コンテンツ省」設置を提言し、予算2000億円を増やすように提言したという。これは、財務省的には受け入れ可能なものだ。