実戦さながら、日米共同で闇夜の離島奪還訓練に欧州メディアも注目 「抑止力を高めるため」SNSでも発信
日米共同統合演習の一環で陸上自衛隊水陸機動団(長崎県)は26日夜、鹿児島県徳之島町花徳の砂浜で上陸訓練を行った。より実戦に近い環境で準備していることを示し「抑止力を高める」(広報担当者)狙いがある。日米の離島防衛訓練に欧州メディアも注目する。 【写真】会話を交わす自衛隊と米軍の隊員=27日午前7時ごろ、徳之島町花徳
午後7時45分、闇夜に光る青とオレンジの点が数キロ沖に停泊する海上自衛隊の輸送艦から離れていった。航海灯だけをつけた海自のホーバークラフト型揚陸艇(LCAC)がどんどん岸に近づき、ごう音を響かせ浜に乗り上げた。ボートで隠密潜入する部隊の後に上陸する想定で、船上で使うのは赤と青のヘッドライト程度。上陸した水機団の隊員たちはライトをつけず闇夜へ駆けていった。 訓練場として整備されていない生地(せいち)ではトラブルも起きる。LCACに搭載した小型トラックが砂浜にはまり身動きが取れなくなった。報道陣に同行した隊員は「いい訓練になる」。別のトラックがけん引して脱出した。 翌朝は米海軍のLCACに隊員約20人と車両を積み込む訓練が同じ場所であり、自衛隊と米軍の隊員が話し込む姿も見られた。 離島防衛の「切り札」と言われる水機団は2018年に発足。島を占拠された際に奪還する部隊で約3400人が所属する。LCACや水陸両用車を使って訓練できる生地は限られており徳之島は貴重だという。同団広報は「攻める気を起こさせないように生地で訓練している様子を示すことが重要」と交流サイト(SNS)で発信する。
ドイツとオランダのメディアも訓練を取材した。フリージャーナリストのミヒャエル・ミューラーさん(59)は今回の映像をドイツの公共放送で流すという。台湾の半導体産業を念頭に「この海域で有事が起きれば確実に欧州の経済や生活に影響する。世界の誰にとっても重要な問題だ」と話した。
南日本新聞 | 鹿児島