1000km飛行…ナイルワークスが開発、「長距離ドローン」の機能
ナイルワークス(東京都千代田区、小嶋康弘社長)は、無人移動機開発などを手がけるコントレイルズ(浜松市東区)やヤマハ発動機などと共同で、2028年度までに長距離物資輸送用無人航空機の開発を目指す。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の経済安全保障重要技術育成プログラムの一環で、1000キロメートルの長距離飛行以外に垂直離着陸能力と30キロ―50キログラムの搭載能力も持たせる。実現すれば物資輸送だけでなく、洋上の不審船監視などの防衛分野でも活用が見込めそうだ。(編集委員・嶋田歩) ナイルワークスが手がける飛行ロボット(ドローン)は農業向けで、搭載能力は農薬換算で8リットル、飛行時間は15分。同社の広報担当者は、NEDOプロジェクトに応募した理由について「物流などの新分野への参入可能性を探ると同時に、農業向けでも搭載能力や飛行距離を延ばすことで新たな需要が期待できる」と話す。 プロジェクトには他にウエアラブルカメラのザクティ(大阪市北区)、ジェイテクト、金沢工業大学、静岡理工科大学が参加。期間は24―28年度の5年間で事業規模は50億円だ。 ナイルワークスの強みは、高精度測位システム「RTK―GNSS」や複数センサーから算出される位置情報で正確に自動飛行できる技術だ。複数作物を栽培する田畑で、狙った作物に農薬をまくのには高精度の飛行制御が求められる。同社は農業ドローンで培った飛行、制御技術が「ハイブリッド無人航空機開発にも生かせる」(広報担当者)とみる。 搭載重量が50キログラム近くあるドローンはエクセディが販売するトルコ製機体などがあるが、1000キロメートルの飛行距離はかなりハードルが高く、水素燃料電池やハイブリッド動力システム、高出力モーター、軽量構造技術などさまざまな周辺技術が必要。1000キロメートル飛べれば多くの島しょ部や広い領土・領海を抱える日本にとって市場性は大きい。離島間の物資輸送や洋上インフラへの物資輸送、送電線やパイプラインの点検、海上や山岳地帯の捜索活動など多くの用途が考えられる。 数百キロメートルから1000キロメートル飛べる無人機の開発はテラ・ラボ(愛知県春日井市)や空解(東京都町田市)も手がけており、防衛省や海上保安庁などの需要を見込む。 エアロセンス(東京都北区)も内閣府の経済安全保障重要技術育成プログラムのもと、搭載重量10キログラムで90分以上飛べる固定翼型無人機を開発中。今後、適用する市場の見極めとともに、ドローンの開発競争も一層加速しそうだ。