【特集】亡き母の着物はコートに…古くなった服を“蘇らせる”奈良のスゴ腕の縫製職人に密着 遠回りして見つけた“居場所”「東京にこだわる必要はない」
鹿岡さんがこの店を開いたのは、2022年3月。腕の確かさが口コミで広がり、わずか4坪の小さな店に、月に100件以上の依頼が舞い込みます。 (女性客) 「これを、またお願いしたいです。亡くなった母の着物で、これを羽織り物にしていただきたいんです。おばあちゃんが母に、嫁入り道具で持たせてくれたやつでしょうね」 自分が着ることはないだろうと、しまい込んでいた母親の遺品。しかし、時間が経つにつれて、その思いに変化があったようで…。 (女性客) 「仲が悪かったんですよ、すごく親子の仲が悪くて。でも、亡くなったら、いろいろと悪いことをしたなぁって、感傷に浸ってしまって。着たいけど、着方もわからないし。それだったら、洋服に。ここなら面白いもの作ってくれるだろうと」
(女性客) 「とりあえず、そのへんに売ってそうな平凡なやつは、やめてください。あまりない物が欲しいので。お願いします」 (鹿岡さん) 「わかりました」
「着物を洋服に仕立ててほしい」という、鹿岡さんにとって初めての依頼です。まずは糸をほどいて、一枚の生地にしていきます。 (鹿岡さん) 「絶対に生地を破ったり、傷つけないように。一番ミスをしてはいけない、緊張する瞬間です」
そして、自分が思い描いたデザインを基に型紙を作り、それに合わせて生地をカットしていきます。作業には、繊細さが求められますが…。 (鹿岡さん) 「それぞれのストーリーがある服をお預かりしているので、それを蘇らせる、生き返らせることは、すごく嬉しいです」
「ありがたくて、ミシンを踏みながら泣きそうに」上京・挫折…遠回りして見つけた“自分の生きる道”
奈良で生まれ育ち、小学生のころからファッション雑誌を読み漁っていた鹿岡さん。大学卒業後は就職をせず、服飾の専門学校に3年間通いました。 (鹿岡さん) 「1回東京で挑戦してみてやろうと思って、何の伝手もなく、就職もせず、そのまま東京に行ったんです」
目指した花の都・東京。ファッション雑誌のスタイリストのアシスタントを経て、タレント専属のスタイリストに。自信をつけた鹿岡さんが自分で作った服を販売する店を持ったのは、上京して10年目のことでした。ところが…。
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