【特集】亡き母の着物はコートに…古くなった服を“蘇らせる”奈良のスゴ腕の縫製職人に密着 遠回りして見つけた“居場所”「東京にこだわる必要はない」
痛んだ服の補修依頼も多く、この日は、シャツの破れた裾を直していました。 (鹿岡さん) 「表に見えてくる修理なので。でも、『これが味になって良い』『愛着が湧く』という人も、けっこういて。ジーパンとかでも、自分が育てている気持ちになると、よく言われますね」
このシャツのリペアを依頼したのは、あるきっかけで「服を大切にするようになった」という尾崎ばねっささんでした。 (尾崎さん) 「海外に行ったときに、自分の中でボロボロになった服を、荷物を減らす目的で捨てて帰ってくることをしていて」 タイに旅行をしたときでした。いらなくなった服を、ホテルの部屋にあるゴミ箱に捨てて外出。ところが夕方、部屋に戻ってみると、捨てたはずの服がきれいに畳んでベッドの上に置かれていたといいます。 (尾崎さん) 「『これ、ゴミじゃないよね』と、間違って捨てたと思われたのかなと。それで反省というか、格好悪いなと。それで、買ったらそれを大事に使う、長く着る前提で服を見るようになりました」
(鹿岡さん) 「日本人から、『買ったほうが安い』という言葉を何度聞いたことか…そういう買い方をされる服も、かわいそうだと思います。愛着が持たれないですから」
母親の遺品である着物を洋服に仕立て直す初めての依頼を受けて、1か月。いよいよ、完成しました。 (女性客) 「どんなのが出来上がったか、楽しみです」 (鹿岡さん) 「こんな感じで」 (女性客) 「すごい、すごい、すごい。きれいにしてくれたんや」 誰も再び着ることがなかった、母親が残した着物。鹿岡さんの手で、唯一無二のコートに生まれ変わりました。 (女性客) 「こんなのになっているとは思っていなくて、びっくりしました」 (鹿岡さん) 「似合いますね」 (女性客) 「すごい。これは嬉しい。ありがとうございます」 (鹿岡さん) 「安っぽくしたくなかったので、全部手で縫いました」 (女性客) 「めっちゃ感動やわ。これは嬉しい。ありがとう」
(鹿岡さん) 「喜んでもらえて、『また使えます』という言葉が、一番嬉しいです」 「縫製基地」―ここは、遠回りしたからこそ見つけた居場所。必要としてくれる人がいる限り、服に新たな命を吹き込んでいきます。 (「かんさい情報ネットten.」2023年11月13日放送)
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