【特集】亡き母の着物はコートに…古くなった服を“蘇らせる”奈良のスゴ腕の縫製職人に密着 遠回りして見つけた“居場所”「東京にこだわる必要はない」
(鹿岡さん) 「本当に、3日間売上なしとか、そういうのもあって、あの時は本当につらくて、うつになりかけたりとか。『俺って何も必要とされていないのでは?』という思いを感じる時期でした。その途中から、服のお直しの依頼がちょっとずつ増えだして。お客さんに喜んでもらえる顔を見て、そこで自分の生きる道が見えました」
東京にこだわる必要はない、と地元の奈良に戻り、洋服のリメイクとリペアの専門店を開くことにしました。その決断に今、思うことは…。 (鹿岡さん) 「自分が探していた宝物が意外と、遠回りしたけど、奈良にあったんだと。ほんまにありがたくて、ミシンを踏んでいるときに、泣きそうになることが何回もあります。あの苦しかった日々を今、自分に見せてあげたいと思うぐらい(笑)」
一番嬉しい言葉は「また使えます」 一枚一枚、大切に命を吹き込む
奈良にあるライブハウスで出番を待つ、川北信吾さん。鹿岡さんの店の常連客です。服のリペアを頼まなければならない「理由」が―。 川北さんは9年前、右腕の肘から先を、仕事中の事故でなくしました。それでも好きだったギターへの思いは捨てがたく、娘に手助けをしてもらい、義手を使った演奏をひたすら練習、ステージに立てるまでになりました。 (鹿岡さん) 「義手が太くて、袖口のボタンを留められないらしいです。そうすると、ギターを弾くときに袖口がぶらぶらして、弦が見えにくいと」
そこで鹿岡さんが提案したのは、袖を短くしてデザインし直すことでした。 (川北さん) 「ヤル気スイッチというか、お気に入りの服ができたら、『ちょっとあそこに行くときには、これを着ようか』とか、気持ちも昂りますし」 気持ちが軽くなれば、また頑張れます。
別の日、飛び込みでやってきたのは、外国人観光客。日本の古着屋で買ったジーンズを、短くカットしてほしいとのことでした。 (外国人観光客) 「すごい!Perfect!カッコイイ!ありがとう」 Q.外国人観光客からの依頼は多いですか? (鹿岡さん) 「多いですね。バックパッカーの人が、リュックが破れたから直してほしいというのが、めっちゃ多いです。あと、鹿に角でダウンコートを破られたとか(笑)海外の人は、『直して使う』という文化が根付いています」
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