「おにぎりを買いに来てギガ回復」もいいけど…「未来のコンビニ」に必要なもっと本質的なこと
「コンビニでギガが回復する新体験」
会見の発表内容以外でも、ローソンは公式サイトなどで、2030年に向けた店舗の形を紹介している。その中では、アバタークルーによる接客や、OTC医薬品(薬剤師らへの相談が必要な医薬品)のリモート販売、そのほか、なんでも相談窓口という機能を持った「リモートよろず相談」を構想している。こちらはスマホやパソコンでは体験できない、新たな仕掛けがより必要になっていくことだろう。 また、ドローンやロボット配送など、規制緩和が今後の展開の鍵となる分野に関しては、三菱商事グループの知見と人脈を生かし、政府などと交渉していくのかもしれない。 ローソンは、非上場化を経た今年8月に、KDDIと三菱商事が50%ずつ出資する共同経営体制に移行している。KDDIが50%保有した後の取り組みとして特筆すべきなのは、「コンビニでギガが回復する新体験」(KDDI高橋社長)だろう。 これは、povoのeSIMユーザーを対象としたもので、ローソンへの来店1回あたり100MBの通信容量が回復し、月間10回、1GBまでチャージされるというサービスである。2024年度内に開始予定。買い物をしなくても、来店するだけでギガが回復するのだという。 ローソンにとっては、来店客の“ついで買い”を狙う戦略となり、KDDI(au)にはドコモやソフトバンク、楽天など他社との国内回線数獲得競争を有利にする狙いがある。 また、外国人観光客にとっても、日本はフリーWi-Fiの少なさがインバウンドのアキレス腱になっている。その解決策として、ローソン店舗でのWi-Fiの強化を実現すれば、さらに他社との差別化がはかれるだろう。
どれだけ仕組みが優れていても…
こうした取り組みでローソンが目指すのは「リアル小売ビジネスをトランスフォームする“グローバルリアルテックコンビニエンス”」という未来像だ。これ自体には私としても期待大だが、コンビニは小売業である以上、どれだけ仕組みが優れていても、良い商品の品揃えがなければ、誰も買わないという大原則を忘れてはならない。 50周年を迎える日本のコンビニの歴史を振り返ると、前半の25年で、今の日本式コンビニの大枠はほぼ完成してしまったといえる。直近の25年では、おにぎりやスイーツ、カウンターファストフードなどが進化し、高付加価値商品の単価アップが売上を支えてきた。 特に、メーカーとの協業を含めたプライベートブランド商品を中心とする、自社開発商品が売り場の大半を占めるようになったことがその象徴だ。1998年以降は税制改正による6回のタバコ料金の値上げもコンビニの売上を支えており、タバコの売上が全体の約4分の1を占めるまでになってしまっている。 未来のコンビニ像を考えるうえで「良い商品」とは何か。私は、今後、コンビニには“できたて”の中食(持ち帰りの弁当類)がますます求められると考えられている。最近、セブン-イレブンが店内で揚げるドーナツの取り組みをはじめたが、これもできたて需要を見越したものだと考えている(詳細は別記事「“ミスド”を目指すとまた失敗する… セブンはなぜ「ドーナツ」に再挑戦するのか」を参照)。 超高齢化で人口減が続く中、ローソンに限らずコンビニ全体では、年間来店客数が減少している。コロナ前の2019年の年間来店客数は174億5,871万人だったが、2023年は161億8,136万人とおよそ13億人の顧客が減少する厳しい状況が続いているのだ(参考:日本フランチャイズチェーン協会)。中食、とくにできたてのものを拡充させ、高齢者らの来店を増やせるかが、これを打破するひとつのポイントでもある。