鎌倉で「白タク」横行、成田周辺から観光地に拡大…容疑の中国籍男「友達の友達を乗せただけ」
コロナ禍後のインバウンド(訪日外国人客)増加に伴い、神奈川県内の観光地で無許可営業の「白タク」が増えている。取り締まりが強化された10月1日以降だけで、神奈川県警は訪日客狙いの運転手6人を逮捕。年間数件だった摘発件数は今年、すでに12件に上っている。(横浜支局 中山知香) 【図解】一目でわかる…中国語の旅行アプリを使った白タク行為
外国人観光客でにぎわう鶴岡八幡宮(鎌倉市)の参道「若宮大路」。12日、十数人の捜査員が通行する車に目を光らせていた。正午頃、赤信号で停止した川口ナンバーの黒い高級ミニバンに一斉に駆け寄り、後部座席の人に声をかけた。
「どういう関係? 運転手とは友達じゃないですよね」
「はい」
県警は車を運転していた中国籍で自称車修理販売業の男(34)(東京都足立区)を道路運送法違反(有償運送禁止)容疑で現行犯逮捕した。調べに対し、「友達の友達を乗せていただけ」と、容疑を否認している。
県警によると、車には観光目的で中国から来日した家族6人が乗っており、東京の民宿と鎌倉と江ノ島を往復する予定だった。中国語の配車サイトで予約し、事前に約4万2000円を支払っていた。突然の出来事に驚いた様子で、「違法なタクシーだとは知らなかった」と説明したという。
主に成田空港周辺で問題視されていた白タクだが、鎌倉市のほか、横浜市内の観光スポットなどでも摘発事例が出ている。そうした車両に対する苦情は多く寄せられており、「駐停車禁止の道路で客を乗り降りさせ、渋滞悪化を招いている」(タクシー会社)といった声もある。
白タクは乗った人にとっても、事故が起きた際の無保険トラブルなどのリスクが大きい。県警交通捜査課の山本東(あきら)課長代理は、「地域から不安の声も多い。注意喚起と取り締まりの強化を続ける」と話している。