国民民主・玉木代表の「演説」を専門家が分析 「時代に合わせたリーダーシップの好例」
政治家の巧みな演説は人を惹きつけ、票となって議席に反映されている。衆院選で議席数を公示前から4倍に増やした国民民主党。大躍進の要因の一つとして挙げられるのは、玉木雄一郎代表の演説だ。どのような話術だったのか。AERA 2024年12月2日号より。 【写真】衆院選の開票が進み、笑顔で質問に答える玉木氏 * * * 衆議院議員選挙の投票日を翌日に控えた10月26日夜、東京駅前。国民民主党代表の玉木雄一郎(55)は選挙戦最後の演説に立った。丸の内北口の一角が人波で埋まり、YouTubeライブの同時接続は確認できただけで最大3万8千人ほどにのぼった。玉木が力をこめるたび、聴衆からは拍手や歓声が沸く。YouTubeのコメント欄は賛同する書き込みであっという間に流れていく。公示前7議席から4倍増となる28議席を得た国民民主党の「躍進」を象徴するシーンだった。 この約28分間の演説で、玉木は50回以上、「皆さん」という言葉を繰り返した。 「皆さんと一緒につくってきた12日間」「皆さん今日はありがとう。(中略)皆さん、国民民主党を、私たちを見つけてくれてありがとう」「1票で変わります。いや、変えましょうよ皆さん」 ■30秒に1回「皆さん」 平均して30秒に1回、演説の肝となる部分では畳みかけるように「皆さん」を連発した。元NHKキャスターでスピーチコンサルタントでもある、長崎大学の矢野香准教授(社会心理学)はこう分析する。 「玉木さんは演説で『東京都民以外の人、他の地域から来てる人何人います?』や『選挙行ってください。絶対行ってくれますか? 行く人?』など観衆に手を挙げさせる場面をつくっています。盛り上がる群衆のなかで『皆さん』と連呼され、自分と同じ動作をしている人が大勢いると、強い同調効果が働きます。結果、無意識のうちに、皆と同じようにしよう、言われたとおりのことをしようとなります。仲間意識を芽生えさせる対話型リーダーシップの話し方で、今の時代に即した手法です」 政治家にとって、演説は「生命線」とも言われる重要な技術のひとつだ。巧みな演説は大衆を惹きつけ、票となって議席に反映され、政策実現の源泉となる。矢野准教授は政治家に必要な話し方についてこう説明する。 「政治家に必要なのは、単なる上手な話し方ではありません。人心を掌握し、行動変容を起こす話術が求められます。これには主に三つの要素があります。一つ目は『誰が』という個性が明確なこと。二つ目が影響力を与える話し方であること。三つ目が時代に合わせたリーダーシップを取れることです」