国民民主・玉木代表の「演説」を専門家が分析 「時代に合わせたリーダーシップの好例」
■語尾タメ口で熱量表現 「皆さん」の連呼は、まさに時代に合わせたリーダーシップの好例だという。かつて、政治家に求められたのはトップダウンで大衆をまとめる「支配型リーダーシップ」だった。聴衆には「あなた」と呼びかけ、1対1の関係をつくる。先代や党首らから受けた「恩」を強調する手法もとられてきたという。 「少し前まではそれが正解で、私もトレーニングでは『あなた』と呼びかけるよう指導していました。ただ、今回の選挙では仲間意識を醸成する手法である『皆さん』連呼の効果が高かったように感じます」(矢野准教授) そして矢野准教授によると、この演説にはもうひとつ象徴的な言葉があった。3要素のひとつ、「影響力を与える話し方」にあたる部分だ。演説の終盤、玉木は「何とか21議席以上取りたい」とし、「三つ皆さんにお願いがあります」と切り出した。そして、「身の回りにいる『絶対に選挙に行かない人』を一人捕まえて一緒に選挙に行く」「私(玉木)の写真や動画を撮り拡散する」「『#比例は略さず国民民主党/#国民民主党』の二つのハッシュタグを入れて何か投稿する」ことを求めた。 「玉木さんは『選挙は熱伝導です』と言って聴衆に『熱』を拡散するように求め、極めて具体的な行動を示しています。ただ『投票してください』だけでは効果は薄い。何をしてほしいか細かく伝えて行動を促す、影響力を与える話し方です。私の知る限りこの手法を日本の選挙で最初に取り入れたのは19年の参院選、れいわ新選組結党直後の山本太郎さんでした」(同) ほかの専門家からも、「玉木演説」への評価は高い。政治家やビジネスパーソンへ話し方トレーニングを提供するkaeka代表で、スピーチライターの千葉佳織さんは政治家にとってのうまい演説を、「わかりやすさと情熱があること」と表現する。 「玉木さんは『手取りを増やす』『若者をつぶすな』という対象が明確でわかりやすいフレーズを定着させ、一点集中で話をしています。そして、数字やファクトを用いて現状を語る部分と、『選挙を政治家の就職活動にはしない』など思いを語る部分のバランスがいい。熱が入ると語尾がタメ口に変化しがちですが、これもうまい熱量表現です」 実際、東京駅のマイク納めでも、経済政策への思いを丁寧に語ったあと、突如語調を強め、語尾を変化させた。 「だからね、私は政治とカネの問題、許せないんだよ。(中略、自民党の議員が)肝心の政策や経済政策、ちっとも考えてないからだよ、皆さん!」 聴衆も沸き、玉木の「熱」が伝わったことがよくわかった。これは、小泉純一郎元首相(82)らも多用した手法だという。(文中一部敬称略)(編集部・川口穣) ※AERA 2024年12月2日号より抜粋
川口穣