「ハリスの当選確率60%」は本当か?驚異的な勢いの正体は
トランプの人格ではなく「ブランド」を攻撃
5)ハリスは目覚ましい成長力を発揮している。演説中の身ぶり手ぶりに始まり、個人的なストーリーの用い方に至るまで、数年前に比べると候補者として格段に成長した。 私の学生たちは、ハリスに成長の余地がほとんどないと見なして、大統領になる可能性をほぼゼロと判断していた。しかし、そうした評価は間違っていたようだ。 6)ハリスは自分の弱点を心得ていて、苦手なことを徹底して避けている。事実上の民主党大統領候補になって1カ月余りの間に、一度も記者会見を行っていない。準備なしで質問に回答するのが苦手なため、ボロを出しかねない局面を極端に制限しているのだ。 7)ハリスは、トランプに対抗する上で有効な主張ができている。バイデンはトランプを邪悪な脅威と位置付ける主張を展開したが、ハリスはトランプの「奇妙」さを強調し、嘲笑している。 トランプは半世紀近くアメリカのセレブであり続け、国民によく知られている存在だ。そのような人物の人格を否定することは容易でない。そこで、ハリスはトランプの人格ではなく、ブランドを攻撃している。人格に対する評価はそうそう変わらないが、ブランドへの評価は変わりやすい。 8)2008年の金融危機に端を発する大不況以降、アメリカ人の間には「変化」を求める思考が根強くある。ハリスはトランプに比べて未知の存在であり、年齢も若いので、現職の副大統領という立場にありながら、自身を変化の担い手と位置付けやすい。 9)バイデンは政策を訴える際、トランプの危険性を強調していた。それに対して、ハリスは有権者を中心に据えたメッセージを発し、大衆迎合的な経済政策を前面に押し出している。有権者を主役と位置付けているのだ。 10)アメリカの社会には、新しいリーダーやフレッシュなリーダーを欲する思いが鬱積している。その点に関して言えば、トランプは過去を体現する存在と言わざるを得ない。 選挙戦がバイデン対トランプという図式だったときは、バイデンがトランプの危険性を強調しても、有権者にあまり強い印象を与えられなかった。有権者は、現職大統領の健康問題を心配することにも辟易していたからだ。しかし、ハリスがトランプの対抗馬になったことで状況は一変した。