「ハリスの当選確率60%」は本当か?驚異的な勢いの正体は
<ハリス出馬で予想外の巻き返しに成功した10の理由と、今後は失速する可能性について徹底分析する>
私はこの3年間、大学の学生たちに大統領選についてさまざまな問いを発してきた。イエスかノーかの問いを投げかけて、選挙に関する予測をいろいろ尋ねてきたのだ。【サム・ポトリッキオ(本誌コラムニスト、ジョージタウン大学教授)】 学生たちの回答は、ほとんどの問いでイエスとノーに大きく二分されたが、ある問いではほぼ全員の答えが一致した。その問いとは、「カマラ・ハリスは次期大統領になるか」というものだ。その確率は限りなくゼロに近いと、大多数の学生は考えていた。 しかし、状況が変われば、当然に思えていたこともたちまち変わる。ジョー・バイデン大統領が選挙戦撤退を表明した後、ハリス副大統領は後継者としての滑り出しに成功し、8月20日には民主党大会で正式に党の大統領候補に指名された。ハリスの現時点での当選確率は60%程度に達している。 ■ハリスが持つ強みと弱み どうして、ハリスはそれまで選挙戦で劣勢だった民主党に勢いを取り戻し、アメリカ初の女性大統領の座に近づいているのか。その背景には10の強みがある。 1)今回の大統領選の特徴は、多くの有権者がバイデンにも、対抗馬であるドナルド・トランプ前大統領にも嫌悪感を抱いていたことだ。しかし、バイデンの撤退により、棄権したり、2大政党以外の候補者に投票したりするつもりでいた有権者に、ハリスという新しい選択肢が生まれた。 2)選挙の結果は、主として候補者間の比較で決まる。これまでは、肉体面でも認知機能の面でもバイデンより健康に見えることがトランプの最大の強みになっていた。しかし、20歳近く年下のハリスと争うことになり、トランプは突如として自身が高齢批判にさらされる側になった。 3)トランプをいら立たせる対立候補として、女性であり、移民の子供でもあるハリス以上の存在はおそらくいない。影響は既に見え始めている。トランプは、ハリスの選挙集会に詰めかける聴衆の人数が気になって仕方がないようだ。 4)大統領選ではたいてい、未来志向のメッセージを打ち出した候補者が勝つ。著述家のデービッド・ブルックスが指摘しているように、この面でのトランプとハリスの違いは、この夏の共和党大会と民主党大会にくっきりと表れている。 トランプを大統領候補に指名した共和党大会は怒りのメッセージであふれていたのに対し、民主党大会は「民主党の女性を信じよう」「一緒に勝利を収めよう」「再び歴史をつくろう」といった前向きのメッセージに満ちていた。