「まずはご挨拶だけでも」と言う人は損してる…商談や交渉を左右する"相手の時間をもらうための神フレーズ"
■「質問」で相手の行動を自然に引き出す 交渉や説得における著作で有名なのは、社会心理学者のロバート・B・チャルディーニ博士でしょう。ベストセラー『影響力の武器』は1991年の刊行にもかかわらず、2023年に4つ目のバージョンとなる新版が発表されるなど愛され続けています。博士の提唱するさまざまなアプローチの中で特に興味深いのは、質問の活用方法です。相手に質問を投げかけることで自発的な行動を引き出すというのです。 例えば、「投票に行きますか?」ではなく、「あなたが投票に行く理由は何ですか?」と質問したところ、投票率が大幅に向上したのです。質問で相手の考えを引き出すと、その後の行動も回答に引っ張られていくのです。 また、営業の場面で相手に商品を買ってもらうために、「この商品をぜひ導入してださい」と直接交渉するのではなく、「この商品は、御社のどんな問題に効きそうでしょうか?」と問いかけると、相手は商品について深く考え、自分の言葉で解決策を見つけようとします。その結果、どんどん自発的に意欲が高まるのです。 質問には相手の思考を促し、その答えに基づいた行動を引き出す力があります。単なる押し付けではなく、相手が納得して行動するという理想的な結果を得るためにも、質問の力をうまく活用できるようになりましょう。 ■理由や背景は率先して伝え、一緒に考える 【損】コストダウンは難しいです→【得】最悪の場合、こうしたリスクがあります なぜならば、という理由や背景は率先して伝えましょう。「コストダウンは難しいです」と言うだけでは、明確なリスクやデメリットが伝わりませんから。「こういうリスクを心配しているので、コストを削減することはおすすめしないのです」と伝えて初めて、相手はこちらの「関心事」を理解してくれて、同じ方向へ向かって進み始めることができるのです。 例えば、製造業。「コストダウンは難しいです」と言うだけでは、相手もうっすら分かっていることを繰り返しているだけ。相手の考えを変えることはありません。代わりに、マイナスの未来を共有しましょう。「生産ラインを縮小することになるため、今後、突発的な受注増に対応できなくなる恐れがあります」と具体的なリスクを示すことで、相手はその問題の深刻さを理解しやすくなります。判断に必要な材料を増やすわけです。 また、信頼関係を築くためにも、対策を添えることも有効です。単に「難しい」と突き放すのではありません。「ここが難しいですが、一緒に解決策を考えましょう」とポジティブなサポートも示すことができれば、前向きな関係が生まれます。人を動かすためには、自分も率先して動くのです。