食もバイオも環境も 人気の農業高校は実力もすごい!
『週刊少年サンデー』連載中の人気漫画『銀の匙 Silver Spoon』(以下、銀の匙)の舞台は、北海道のエゾノーこと大蝦夷農業高校。札幌の中高一貫進学校からエゾノーの酪農科学科に転入学した主人公が、汗と涙と土にまみれながら成長する姿は読者の共感を呼び、単行本12巻の累計が1500万部を超えるベストセラーになりました。 そのエゾノーのモデルとされるのが大正10年創立の北海道帯広農業高校。『銀の匙』作者の荒川弘さんも卒業した伝統校の志願者は昨年から急増しています。今年も酪農科学科や食品科学科などは2倍近い競争率で、ネット上でも「銀の匙効果」と話題を呼びました。 農業高校を題材にした話題作は『銀の匙』だけではありません。あさのあつこ作の小説『グリーン・グリーン』は、山間の農林高校に赴任した新米女性教師が豚と会話(?)し、ジャムやハムづくりに奮闘する成長物語。アイドルオタクや美少年、本物の元アイドルも登場する白鳥士郎作の『のうりん』はラブコメの衣装をまといつつ遺伝子組み換えなど農業の今日的問題にも迫るライトノベル。ほかにも山形県の農業高校生が、日本一の芋煮フェスティバルを目指して里芋づくりに挑戦する、相澤りょう作の『アグリ』など、農業系高校を描いた作品は豊作模様です。
全国に約300校。およそ8万人の生徒が学ぶ農業系高校は、農場や畜舎、食品加工施設などを備え、収穫した作物だけでなく加工食品を販売しているところも少なくありません。農高ブランド商品の数々は、学校祭や地域のイベント、パイロットショップなどで販売されていますが、全国に販路を広げた好例が熊本県鹿本農業高校の「高校生のコメロンパン」。鹿本町特産のメロンと熊本産米粉のコラボ作品ですが、本物のメロン果汁を米粉の生地に練り込むのは失敗の連続だったそう。試行錯誤の末、果汁入りの白玉団子を生地に封じ込める方法に辿りつき、製造委託や販路拡大に地域の製パン店や食品販売会社の協力を得て、年間20万食以上を売り上げるヒット商品になりました。同校の取り組みは「農業系高校の甲子園」とも呼ばれる日本学校農業クラブ全国大会で、2008年および2009年に農林水産大臣賞と最優秀賞を受賞、2010年には農林水産省主催のフード・アクション・ニッポンアワードを受賞しています。