なり手不足で変わる地方議会、オンライン出席条例整備 切り抜き動画拡散で質問取り下げも
地方議員のなり手不足が課題となる中、各地で議会改革が進んでいる。災害などの緊急時だけでなく、育児・介護中でも議員の質問の機会を確保する観点から、300超の地方議会が委員会のオンライン出席を可能とする条例などを整備。議場出席が必要とされる本会議の質疑でも、効率的な運営に向けて試行錯誤が続く。有権者の関心を喚起しようと議会中継のあり方も変わりつつある。 【イラストで解説】本会議での答弁者の待機席を導入 ■育児・介護中も質問 地方議会の委員会運営については、総務省が令和2年の新型コロナウイルス禍以降、蔓延(まんえん)防止の目的でオンライン出席を認めるよう全国に通知した。5年1月時点で都道府県と市区町村の計1788団体のうち304団体が実施に必要な条例などを整備し、計186団体が実施または試行した。 大阪府議会では2年5月の条例施行時から、育児や介護などもオンライン出席の理由として認めていた。育児中にオンライン出席を経験した立憲民主党系会派の山田健太府議は「いつもの委員会と同じ感覚で質疑ができ、非常に助かった」と振り返る。 ■町村議選の3割弱が無投票 こうしたデジタル化に活路を見いだすのが、議員のなり手不足が深刻な町村議会だ。 全国町村議会議長会によると、補欠選挙などを除く町村議の一般選挙は令和元年5月~5年4月に926団体で実施。3割弱の254団体で候補者数が定数を超えず無投票となり、うち31団体では定数割れに。無投票と定数割れはいずれも過去最多という。 同議長会は、オンライン出席が、出産前後の女性議員や障害のある議員をはじめ「多様な人材が参画するための一助となる」と評価。11月にまとめた国への重点要望で、デジタル化推進のため技術的・財政的な支援を求めた。 ■質問時間確保へ「待機席」 委員会と異なり、本会議の出席は地方自治法上「議場にいること」が必要と解釈される。大阪府議会は5年3月、本会議の議事全般でオンライン出席が可能となるよう国に意見書を提出した。 さらに今年の9月定例会では、本会議の一般質問で答弁する府幹部の待機席を演壇のそばに設置。演壇から離れた自席との間の移動時間を短縮し、議員の質問時間を確保する狙いだ。