「ポジティブになるきっかけになれれば救われる」DEAN FUJIOKAが作品を生み出し続ける原動力とは?
僕の活動が誰かの助けになったら幸せ
――DEANさんのさまざまな活動の原動力になっているものは何でしょうか? DEAN FUJIOKA: 僕が生み出す作品や、活動のあり方や発言が、誰かにとってネガティブからポジティブなスパイラルに変わっていくきっかけになったらいいな、ということですね。もし僕の活動が誰かの助けになれたら、ものすごく幸せなことですし、過去の自分も救われます。 ――ネガティブからポジティブなスパイラルに移行した経験がご自身にもあったということでしょうか? DEAN FUJIOKA: そうですね。例えば、僕はこれまでの人生の前半で「好きなときに自分がやりたいことをやること」が自由だと思っていたんです。だけど、こういった自由には代償もあり、「自由って縛られないことだけじゃない」と気づきました。 正直、いまはそういった自由はありません。でも自分で音楽を作って、詞を書いて、映像作品を作って、企画プロデュースをするなど、人生前半戦にはできなかったような自由があって、これはポジティブなスパイラルに移行できた結果なのかな、と。日々の細かいことを見ると、しんどい部分もありますけど、どちらかというと自分はやりたいって思っていることをやっている方で、これってすごく幸せですよね。つまり、そういう権利をいただいているということだと思うんです。これをabuse(濫用)するのか、precious(尊い)なものにするのかは、自分次第だという覚悟を持っています。 ――コロナ禍で世界的にネガティブなムードが漂いましたが、DEANさんはコロナ禍をどう捉えていましたか? DEAN FUJIOKA: コロナ禍になって他の国への行き来が難しくなったため、日本で2年半ほど生活しています。約20年ぶりにじっくりと腰を据えて日本社会を解像度高く見ることができて、腑に落ちることがたくさんあったんですよね。特に、自分が日本を出た理由を改めて考えるきっかけになりました。 自分がいろいろなことにチャレンジし続けたのは「社会の輪郭を知るため」で、違う角度から社会との接地面を確かめるという実験だったんだな、と思いました。だから、自分はコロナ禍を日本で過ごせて良かったとポジティブに捉えています。 ----- DEAN FUJIOKA 1980年、福島県生まれ。2004年に香港で活動をスタート。2006年から台湾に拠点を移し、歌手デビュー。2009年にジャカルタへ拠点を移し、1stアルバム「Cycle」を自主制作開始。2013年に日本で1stシングル「My Dimension」をリリース。2015年以降は拠点を東京に置き、国内ライブツアーを重ねる。2019年に2ndアルバム「History In The Making」をリリースし、アジア・ツアーを成功させる。2021年に3rdアルバム「Transmute」リリース。2022年7月にはニューシングル「Apple」をリリース。 文:中森りほ 制作協力:BitStar