【板垣李光人が取材】地震で存続危機も……「能登上布」唯一の織元、伝統を守る思い 前を向くベテラン職人の“心の支え”は
日テレNEWS NNN
上質な麻織物として知られる、石川県の文化財「能登上布」。1月の能登半島地震で、唯一の織元が大きな被害を受けました。伝統を守ろうと奮起した織元や前へ歩き始めた職人を、俳優で『news zero』パートナーの板垣李光人さんが取材しました。
■今も傷跡が…古い木造家屋が残る町
金沢から車で約1時間の場所にある石川・羽咋市。 板垣さん 「これだけ倒壊している建物が…。その時の被害の大きさや状況がすごく伝わってきます」 古い木造家屋が多く残るこの町には、今でも地震の傷跡がありました。 6月1日に訪れたのは「山崎麻織物工房」。石川県の指定無形文化財「能登上布」を製造する、日本唯一の織元です。手織りの麻の独特な素材感に、「雨絣」「雪輪」など雨や雪が多い石川県の風土を柄にしたのが能登上布です。 板垣さんはドラマや映画で着物に触れたことから興味を持ち、取材しました。4代目織元の姪でもある、久世英津子さんが迎えてくれました。 板垣さん 「軽いですね」 久世さん 「初めて持った時に、軽さに感動されるんです」
■真っ先に浮かんだ、伝統が途絶える不安
4代続くこの工房は、1891年に創業。今では、ここでしか作られていません。1月に起きた地震で大きな被害に遭いました。 久世さん 「築89年の古民家で、古い建物ですのでヒビが入っていたりとか」 板垣さん 「ダメージが見えていると不安ですよね」 久世さんは地震発生当時、自宅から工房に駆けつけ、被害を目の当たりにしました。余震が続く中、真っ先に思い浮かんだのは「このままでは伝統が途絶えてしまう」という不安だったといいます。 久世さん 「タテ糸を巻き取る、整経機と呼ばれる機械とかが全部倒れて。その光景を見た時は、このまま続けられないと思って…」 工房は、一時停止に追い込まれました。
■被災した織子たちが続々と工房に
そんな中、久世さんの元に、さまざまな声やSNSなどのメッセージが届きました。 「地震に負けないで能登上布を守ってください」「これからも魅力を伝えてください」「次世代にも継承してください」「復活 応援してます」 多くの声に背中を押され、地震から10日後には壊れた整経機を応急処置。最低限、動かせる状態にしました。すると、同じく被災して大変な状況にいるにもかかわらず、織子さんたちが続々と工房に戻ってきてくれました。 久世さん 「道がしばらくガタガタで怖い状況の中でも皆さん来てくださって、ありがたく、感謝しています」