反対の声殺到でどうなる?!欧州スーパーリーグ構想
マンチェスター・ユナイテッドを長く率いた名将アレックス・ファーガソン氏、ユナイテッドひと筋でプレーした元イングランド代表のガリー・ネビル氏、果てはイギリスのボリス・ジョンソン首相やフランスのエマニュエル・マクロン大統領までもが、各クラブのファン・サポーターの怒りや戸惑いを代弁する形で非難の声を上げた状況で、ESL側も一歩も引かない構えを見せている。 米ニューヨークタイムズ紙はUEFAが示した警告のなかで、代表活動を含めた国際大会からの締め出しは違法に当たるとして、各国の裁判所へESL側が嘆願書を提出したとも報じている。所属選手が板挟みになる事態を回避するために打たれた先手と言ってもいい。 ユベントスのアンドレア・アニェッリ会長はUEFAの理事と、200を大きく超えるヨーロッパのクラブが加盟しているUEFAの公認団体、欧州クラブ協会(ECA)の会長をともに辞任した。ECAからはユナイテッドが脱退を表明し、チェルシーやトッテナムも追随する動きを見せていると、ガーディアンをはじめとする複数の英紙がいっせいに報じている。 ECAからの脱退は、イコール、来シーズン以降のチャンピオンズリーグやヨーロッパリーグなど、UEFAが主催する大会へ出場できなくなることを意味する。トッテナムのジョゼ・モウリーニョ監督が19日に電撃解任されたが、理由は成績不振ではなく、ESLへの参戦を決めたクラブ側に対して激怒したモウリーニョ監督が、練習の指導を拒否したためだと報じるイギリスメディアもある。 さまざまな情報が錯綜しているなかで、これまではUEFAとの調整を優位に進めるための駆け引きと見られていたESL構想が、単なるブラフではない状況だけははっきりと伝わってくる。 「これからUEFA、そしてFIFAと継続的な話し合いの場をもち、スーパーリーグと世界のフットボールにとって、最善の解決法を見つけ出していくことを期待している」 共同声明のなかで、ペレス会長は今後の方針をこう語った。コロナ禍で各クラブが被っている経済的なダメージを考えれば、来年8月からESLをスタートさせる青写真が描かれているとも言われる。ただ、UEFAをはじめとする既存団体との溝が埋まらない限り最も大きな影響を受けるのは、誰よりも大切にされるべき実際にピッチでプレーする選手であることを忘れてはいけない。 (文責・藤江直人/スポーツライター)