北陸新幹線延伸は「100年に1度の好機」、福井県が取り組む観光の課題解決から新コンテンツ開発まで取材した
新幹線開業に向けて、宿泊施設や二次交通の課題を解決へ
県は、新幹線開業に向けて、観光の高度化で様々な支援を実施してきている。その一つが宿泊施設の改修支援。特に福井県は民宿が多いことから、民宿のアップグレードに力を入れている。鈴木氏は「新幹線で訪れる旅行者が泊まりたくなるような民宿への改修を進めている」と明かす。 2022年に実施した「民宿リニューアル支援事業」では、県は改修費に対して1/2をを補助。富裕層に選ばれる上質な宿泊施設となる事業計画であること、事業後は平均客室単価2万円以上の宿泊施設となること、特別室やコンセプトルームなど特別感が出る客室を設置する事業であること、を条件とした。 また、民宿の集客力と稼働率向上を目的に、「ふくいの民宿集客力向上事業」も実施。ネット販売を支えるサイトコントローラーなど初期登録費用や宿泊予約サイト掲載用写真撮影費を補助している。 新幹線が県内の主要駅を結んだとしても、観光客にとっては二次交通の課題も残る。県では、開業に向けて、一乗谷朝倉氏遺跡博物館の整備、県立恐竜博物館のリニューアル、三方五湖レインボーラインの整備を支援したほか、東尋坊の施設再整備を実施しているが、鈴木氏は「観光地が点在しているため、どのように回遊し、滞在時間を伸ばしてもらうかが課題」と話す。 その解決の一つとして、新幹線開業に合わせて運行が開始される観光定期バス「はぴバス」を支援する。これは、京福バスなど地元の交通事業者がコンソーシアムを組んで実施。福井駅と芦原温泉駅から3本のコースを運行するほか、越前たけふ駅、敦賀駅、越前大野も加えて募集型企画ツアーも催行する。運行にあたっては、「はとバス」からノウハウを学んだという。 さらに、車移動の利便性と快適性を向上させるために、「タクシープラン等観光二次交通整備事業」も展開している。ハイヤーなど上質車両の購入補助、レンタカーやカーシェアの駐車場確保の支援などを行なっている。 ソフト面でも新機軸を打ち出す。2024年4月からは、航空会社に現役で勤務する客室乗務員がタクシーに同乗し、県内の観光地を案内する「観光タクシー」を運行する予定だ。「特別感のあるタクシープラン」(鈴木氏)として県も支援する。 加えて、タクシードライバー向けに、おもてなしの意識やマネジメントスキルを向上させるセミナーを開催。鈴木氏は「タクシードライバーは観光客との接点。その人の印象が県のイメージになる」と話し、この施策の意義を強調した。 このほか、新幹線開業とは直接関係ないものの、福井空港の利活用としてビジネスジェットの誘致で財政支援を行なっている。県としては、現在、定期便が飛んでいない福井空港にプライベートジェットによる富裕層旅行者を呼び込みたい考えだ。