ここにきて「不景気」「ヤバい」と話題になっている「韓国の縦読み漫画業界」の「意外な実態」
『俺レベ』の「スーパーIP」化
NAVERやカカオらによるプラットフォームやビジネスモデルの輸出は、ユーザー数は増加している一方で収益面では苦戦しているが、IPビジネスとしてのウェブトゥーンの展開は活発だ。 2023年にNetflixで配信された韓国ドラマ14作品のうち、8作品がウェブトゥーン原作だった。2024年はアニメ化作品も増え、『俺だけレベルアップな件』は日本のアニメ制作会社A-1ピクチャーズが制作を手がけてグローバルヒット作となった。のみならず、各国で単行本コミックスも好セールを収め、『俺レベ』はNetmableによるモバイルゲームがローンチから半年で推定売上1億3900万ドルとも報道されている。 「フルカラー、縦スクロール」だからどうとか「縦か、横か」は本質ではなく、結局IPとしてどう育て、運用するかなのだと示した好例となった。 『ラグナロク』『リネージュ』『風の王国』といった韓国のMMORPG(オンラインゲーム)が漫画原作であることは知られているが、韓国のコンテンツ産業では輸出規模はゲームが圧倒的に最大セグメントであり、漫画の輸出額の100倍、映画の200倍ほどある(文化観光体育部『コンテンツ産業調査』を参照)。ウェブトゥーンも、ゲームの原作となり成功した場合のアップサイドの伸び幅は甚大である。 もっとも、アニメ化、ゲーム化とあいまって「スーパーIP」化に成功した作品はまだまだ非常に少ない。アニメで跳ねる作品が少ない理由のひとつとして、もともと美麗な作画を志向しているスタジオ制作ウェブトゥーンは、アニメ版の作画や演出のクオリティをより厳しく見られることがある。たとえば女性向けのロマンスファンタジーなどは、とくにアニメ化が難しい。どう映像化すれば原作ファンにもアニメファンにも受けいれられるものになるのか、どういうタイプの作品ならウケがいいのか、ウェブトゥーンでは再現性のあるかたちでの成功パターンがまだ確立されていない。 ただ、今ではヒット作が多いウェブトゥーン原作の実写の映画化、ドラマ化に関しても、ウェブトゥーンが始まって10年ほどは試行錯誤があり、死屍累々だった。2010年代前半にユン・テホ原作の『苔(MOSS)』や『未生』が出る頃までは、成功事例はごく限られていた。日本のマンガ原作の実写映画も、ファンも納得し、かつ興行成績も良い作品がコンスタントに出てくるまでには長い時間がかかった。各メディアに適したかたちでの二次展開のノウハウが確立するまでには、一朝一夕にはいかない。ウェブトゥーンのアニメ化はまだ本格化してから5年も経っていない。ここも多少長い目で見ていく必要があるだろう。