ここにきて「不景気」「ヤバい」と話題になっている「韓国の縦読み漫画業界」の「意外な実態」
韓国の漫画業界は数年から10年おきに危機と大転換をくりかえしてきた
もともと韓国の漫画産業は、何かが軌道に乗ったと思うとわずか数年で次のビジネスモデルの台頭が起こって勢力図が塗り変わることをずっとくりかえしてきた。常に危機だったのであり、見方を変えればチャンスでもあった。変化の早い業界であるという大前提が韓国でも一部では忘れられているし、日本ではそもそも知られていない。 ウェブトゥーンに限っても、 1.雑誌漫画が危機に陥った1990年代末に個人サイト発で人気作が登場し、書籍化されて数十万部、百万部単位のヒットとなった時代 2.2000年代初頭からNAVERやダウムなどポータルサイトが作家を集めてプラットフォームとして作品を編成した無料閲覧時代 3.2013年にレジンコミックスが課金モデルを導入し、部分有料化(先読み課金や「待てば無料」)が当たり前になり、2015年のカカオページの『月光彫刻師』の成功以来の「人気ウェブ小説原作でスタジオ制作のハイクオリティ作画ウェブトゥーン」(ノベルコミックス)が流行 と小さくない変化を経験してきた。今は日本以外のグローバル市場における課金の伸びなさに直面し、3度目の転換期、調整期にあると思えばいいだろう。 「投資家の予想以上に、ウェブトゥーンのプラットフォームやビジネスモデルを世界各国に展開していくのは難しい」という現実に直面しているだけだ。期待を煽りすぎた反動で叩かれている面がある。 今は過去最高規模の推定販売金額となり、我が世の春を謳歌している日本のマンガ市場のことも、振りかえってみてほしい。ほんの10年ほど前、1990年代後半から2010年代初頭までマンガ市場は右肩下がりで、一部では「もう終わりだ」「衰退産業」などと言われていた。しかし実際にはその時期には新刊書店でのマンガ雑誌やコミックス単行本の購買に加えて、マンガ喫茶やレンタルコミック、ブックオフを通じてもマンガの読書自体は旺盛に行われており、新刊の売上は減っていたもののマンガの需要がなくなったわけではなかった。だからこそ2010年代以降にデジタルコミックへの転換も起きえたのである。 韓国の漫画・ウェブトゥーン産業に関しても、あまり近視眼的に、極端に悲観的に捉えない方がいい。また、「このままではダメだ」と判断してからの変化、切り替えも早いのが韓国企業の特徴である。