パー券問題→安倍派外しで「政治大荒れ」の日本だが…株価への影響は【経済の専門家が解説】
連日多くのメディアで報道されている「政治資金パーティ券問題」。検察は過去の大スキャンダル並みの捜査体制を取り、また岸田首相は、組織的に裏金を作っていたとみられる「安倍派」を相次いで閣僚から外し、交代させる方針を決めました。このようななか、急激な政策転換による日本経済や株価への影響はあるのでしょうか。株式会社武者リサーチ代表の武者陵司氏が解説します。
「パー券問題」を受けて“安倍派外し”…アベノミクスの展開は
米国で12月13日NYダウが史上最高値を更新するなか、突如日本で政変が起きた。パーティ券販売収入のキックバックが政治資金として収支報告書に記載されていなかった。 金額は安倍派合計で5年間数億円という少額、脱税容疑としては少額すぎる。また贈収賄、選挙買収等悪質なものではない。裏金には違いないが犯罪として立件に値するか微妙である。また安倍派以外にも政治資金不記載は蔓延しているとも噂されている。検察は捜査員50人投入という過去の大スキャンダル並みの捜査体制を取っている。 事実関係がいまだ確定していないなかで、岸田首相は安倍派の閣僚、副大臣、自民党執行部を軒並み更迭、安部派外しに舵を切った。最大派閥安倍派の更迭はいままでの政策論争の中枢にいた安倍派つぶしと見られても仕方がない。その背景に安倍元首相が執拗に批判してきた財務省の反撃があるとも、噂されている。 この政変が政策の転換、岸田氏が基本的に継承してきたアベノミクスの修正に結び付くのか、が問われる。 アベノミクスは大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略の3本柱であるが、この第1の矢、第2の矢に変化が出てくるかもしれない、デフレ脱却、成長軌道回復が確かになったあとでの修正であればいいが、性急な政策転換の可能性が出てきたとすればそれは要注意、株価にもネガティブかもしれない。 「積極財政」から「財政規律重視」への転換はあるか 想定されるもっとも大きな変化は財政政策であろう。亡き安倍氏の遺志を継いで積極財政論の先鋒を担ったのは安倍派の萩生田政調会長、世耕自民党参院幹事長等であった。防衛予算をGDP比2%に押し上げるにあたっての財源として国債発行か、増税か大きく見解が分かれた。 24年度の与党税制改正大綱には防衛費増額に伴う増税は明記されない見通しであるが、次年度以降、財政規律が巻き返す可能性が高まった。アベノミクスから財政規律・増税路線への転換が起こるとすれば、それは日本経済と株式にとって一大懸念要因となる。