韓国戦を想起させるゴールで現役締めくくる 2025年から経営者&GMで新たな一歩を踏み出す細貝萌
本田圭佑が発起人の『4v4 JAPAN CUP 2024 RESPECT YOU, au』のファイナルが26日に行われ、三浦知良や内田篤人、乾貴士ら元日本代表の豪華タレントが集結。『レジェンドチーム』としてU-10王者『GAMER』(愛知県)、U-12王者『バルサ奈良』と真剣勝負を演じ、子どもたちにプロのレベルをまざまざと見せつけた。 今季限りで20年間のプロ選手生活にピリオドを打った細貝萌も同期の盟友である本田から誘いを受けて参戦。イキイキとプレーした。小学生相手のゲームでは2得点したが、一つは本田が放ったシュートの跳ね返りを押し込む形。AFCアジアカップ2011準決勝の韓国戦でのゴールシーンを想起させる部分も少なからずあった。 「僕にしてみれば、あのゴールがあったからこそ、サッカー選手としての価値が高まったのは確か。浦和(レッズ)時代も含めて、PKのこぼれ球はつねに狙っていた。キッカーがどっちに蹴るかわからない状況で、咄嗟に走っても間に合わない。日々の積み重ねをああいう大きな場面で出せるのがうれしかったし、重要性を感じたゴールでもありました」 細貝は少し前に代表初ゴールの瞬間をこう振り返っていたが、当時のホットラインが再び完成したことで、気分よく現役ラストイヤーを締めくくれたと言っていい。 「この熱量はやっぱりこのメンバーじゃないと感じられない。萌とも『もうこういう機会がないのが寂しいね』と話しました」と同じタイミングでユニフォームを脱いだ青山敏弘もしみじみと語っていたが、彼らは次なるステージでも飽くなき情熱を前面に押し出し続けていかなければいけないと感じたはずだ。 細貝は2025年からザスパ群馬の代表取締役社長代行兼GMに就任する。そして春には正式に社長としてクラブをリードしていくことになるのだ。 「僕はザスパの顔としてやっていくことになりますけど、とにかくクラブが大きくなるためにベストを尽くしたい。GMというポジションも担うので、しっかり現場とコミュニケーションを取りながら、自分ができることを一つひとつこなし、前進できるように努力していきたいと思っています」 彼は改めて抱負を口にしたが、J3降格を余儀なくされたクラブがすぐにJ2へ復帰するのは非常に難しい。J1経験のある松本山雅FCでさえも4季連続J3という状況を強いられているのだから、“J3沼”からの脱出にはクラブの総合力と地域やサポーターを含めた機運、パッションが必要になる。 来季に向けていち早く沖田優新監督の招聘を決定。新指揮官は大宮アルディージャ、ベガルタ仙台、北海道コンサドーレ札幌で長いコーチ経験があるが、監督として采配を振るうのは初めてだ。戦力入れ替えも進めてはいるものの、完成度の高いチームを迅速に作れるかどうかは未知数な部分がある。 だからこそ、細貝は経営・強化の両面から現場を力強くサポートしていく必要がある。日本国内ではJリーグ屈指のビッグクラブである浦和から群馬まで幅広いクラブに在籍し、海外もドイツ、トルコ、タイと多種多様な経験を積んできた数々の知見がある。それを的確に還元していけば、J2復帰はもちろんのこと、J1を狙えるチームにも飛躍できるかもしれない。手腕が今から非常に楽しみである。 「萌は次の舞台に向けて活動を始めている。マネジメントやクラブ経営といった部分で連絡を取ることも増えています。今後、同年代の仲間が指導者になったり、経営陣に入っていくケースも増えていくので、何かコラボレーションしようとする時にすごくやりやすくなる。何人かまだ言うことを聞かないやつがいますけど(苦笑)、みんなを巻き込みながらいろいろやれればいいですね」と本田も積極支援を約束していた。 すでにサッカースクール経営やファンドビジネス、4v4の全国・アジア展開、来季から関東2部リーグに参戦するEDO ALL UNITEDのクラブ経営など、幅広い活動を手がける本田は細貝にとっても心強い存在だ。彼が持つネットワークを借りながら、クラブの資金・運営規模を拡大する取り組みも可能だろう。真面目でひたむきな細貝らしいアプローチで、日本サッカー界に新風を吹かせてほしいところだ。 新たなキャリアがスタートする2025年に向け、細貝は新年から使用予定の手帳の表紙に憧れの人であるカズからサインをもらったという。 「カズさんは僕が生まれる前からプロサッカー選手をやっていた方。自分も『20年プロをやってきてすごいね』と言われる機会が多いですけど、比べられるレベルではない。同じ空間にいられてすごく勉強になりました」 細貝は目を輝かせたが、57歳で現役という常人には想像もつかない人生を送っているキングカズからの刺激も非常に大きかったに違いない。経営者、強化担当者という領域で超越した存在になるべく、地道な歩みを続けてもらいたい。 取材・文=元川悦子
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