2歳娘の傷害致死、高裁が逆転無罪 5年半の勾留後に異例の保釈中
当時2歳の娘に暴行して死なせたなどとして、傷害致死と強制わいせつ致傷、傷害の罪に問われた今西貴大被告(35)の控訴審判決で、大阪高裁(石川恭司裁判長)は28日、懲役12年とした一審・大阪地裁判決を破棄し、無罪を言い渡した。 【写真】大阪高裁に入る今西貴大被告(中央)。右は川崎拓也弁護士=2024年11月28日午前10時12分、大阪市北区、伊藤進之介撮影 今西被告は約5年半の勾留を経て今年7月、一審で長期の実刑判決を受けたケースとしては異例の保釈をされていた。 起訴内容は2017年12月16日夜、大阪市東淀川区の集合住宅で娘の頭に何らかの衝撃を与え、頭蓋(ずがい)内損傷を負わせ、1週間後に死亡させたなどというもの。当時、妻は外出中で、今西被告が「娘が息をしていない」と119番通報をした。 地裁(渡部市郎裁判長)は、目立った外傷がないのに脳幹まで損傷があるのは揺さぶりなどの「強い外力」を受けた証拠だという、検察側請求の医師の証言を採用。暴行ができたのは被告しかいないと判断した。 肛門(こうもん)に約1センチの傷を付けたとする強制わいせつ致傷罪も認めた一方、足の骨を折ったとする傷害罪は「事故の可能性が否定できない」と無罪にしたため、検察側と弁護側の双方が控訴した。 ■殺人容疑で逮捕、一貫して無罪主張 控訴審も傷害致死が最大の争点となり、医師ら8人が証人出廷した。弁護側は娘の細胞を調べた病理医の意見などから、脳幹の損傷はなく「強い外力」を裏付ける証拠はないと主張。頭蓋内の出血は「感染症や心疾患にもとづく低酸素脳症などでも起きる」と訴えた。 強制わいせつ致傷についても、検察が指摘する程度の傷は、皮膚の弱い娘なら尻を床にこするようにして移動するだけでも生じると反論していた。 今西被告は18年11月、大阪府警に殺人容疑で逮捕され、傷害致死罪などで起訴された。一貫して無罪を主張していた。(山本逸生、大滝哲彰)
朝日新聞社