【独自】「つばさの党」による“選挙妨害” 異例のスピード逮捕に至った舞台裏とは?捜査2課による“執念の捜査”でチラシ配りや再現実験も【2024年重大ニュース】
「デシベル」測定、“再現実験”も
さらに、客観的な裏付けも必要だった。 SNSに投稿された様々な位置角度から撮影された動画を集め、「つばさの党」の演説と、乙武陣営側の演説の音がそれぞれ何デジベルかを検証。 さらに、別の場所で“実験”まで行う。 「つばさの党」から押収した拡声器や、乙武陣営が実際に使った装置を、同じ音量の音を流して再現した。 音響学の専門家の意見も聞きながら、演説が聴衆に届かないことを科学的に立証した。 また、乙武陣営の演説と「つばさの党」の怒号が、文字に起こすと何%重なっているのかなどを細かく解析。 これらは普段、詐欺事件や贈収賄事件などを専門とする捜査2課では行われない手法で、まさに執念の捜査だった。
「警告」後にエスカレート…
亀戸駅前の電話ボックス上から妨害した一件は、発生直後から警視庁内部に緊張が走った。 動画を確認した捜査幹部は「こりゃダメだ」とつい口から漏れたという。 同時に、この状況が続くのを許せば、公正公平な選挙は保たれないと危機感を覚えたと話す。 選挙の場合、違反行為は現行犯逮捕に値するような明らかな犯罪行為でない限り、第一段階として「警告」の手続きを取る。 今回も、妨害行為の早期対処の必要性から、直ちに公職選挙法に定める自由妨害と認定し、2日後の夜に警告を行った。 しかし、「つばさの党」の3人は、警告のために呼び出された城東警察署内で捜査員に顔を近づけて罵声を浴びせたり、書類を叩きつけたりする様子を配信。 その後、反省はおろか逆に3人の行動はヒートアップした。 捜査幹部はこの時のことを「『つばさの党』による警視庁への挑戦状と受け取った」と振り返る。
ヒートアップする抗議活動への“危機感”
投開票が終わると、妨害を受けたと主張する候補者への聴取など捜査は本格化。 しかし、予想外の事態が起きる。 「つばさの党」の3人が、TV番組で批判的なコメントをした著名人の自宅前などで抗議街宣を始めたのだ。 これはいわば、自分たちに不都合な人たちへの威迫にもなりかねない行為で、恐怖を感じた被害者や関係者が捜査に対して非協力的になってしまう可能性も考えられた。 これには焦りとともに危機感を覚えたという。 捜査2課は、投開票日から約2週間後に「つばさの党」本部やアジトの家宅捜索に着手。 「つばさの党」の怒りの矛先は、またもや警視庁に向くことになる。 翌日からは警視庁本部前での街宣活動が繰り返された。 筆者もその様子を取材したが、警視庁の建物全体に響き渡る音量で、暴言を吐いたり、捜査員の実名を挙げて「逮捕したらぶっ殺してやるからな」とまで言い放ったほか、警視総監公邸にまで押しかけることをほのめかした。 本来であれば、前例のない事件であれば、なおさら逮捕前に時間をかけて証拠を積み上げたうえで“満を持して”逮捕するのがセオリーだ。 しかし「もう予断は許されない」、そう判断した警視庁は家宅捜索からわずか4日後の逮捕に踏み切った。
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